金次郎、GWに近所の有名パティスリーを訪問

せっかくのゴールデンウィークでもあり、妻の股関節の状態も少しずつ改善してきておりましたので、うちの近所に美味しいケーキ屋さんが有るとの会社先輩情報を頼りにそのお店まで久々に少し散歩してみました。天気も良く行楽日和であったためか普段より人が多く出ている印象で、パワースポット小網神社や親子丼の玉ひではいつにもまして長蛇の列となっておりました。兜町の方に歩きますと、昨年オープンしたKABUTO ONEの1FにできたおしゃれカフェのKNAGが賑わいを見せておりこちらも訪問せねばと頭の中にメモりつつ、お目当てのPatisserie easeに到着。11時のオープンを目指して家を出たのですが、行列こそできていなかったものの店内のイートインスペース(6席)は全て埋まっており、フロア内もケーキや焼き菓子を求めるお客さんが次々と来店しかなり混み合っておりました。これは期待できるぞと初心者らしくショートケーキと和栗のモンブラン、そしてこのお店のスペシャリテであるアマゾンカカオシュークリームを購入いたしました。近くの渋沢栄一邸跡地にオープンした姉妹店tealはアジアのトップショコラティエである真砂翔平さんによるチョコレート&アイスクリームのお店ということでこちらも捨てがたかったのですが、さすがに一度に両方食べるのは欲張り過ぎだろうということで今回は諦め次回の散歩の楽しみといたしました。ということで早速帰宅してコーヒーを入れわくわくしながら食べてみたところ、ショートケーキはイチゴがふんだんに詰め込まれているにもかかわらず酸っぱさは感じず程よいコンデンスミルク的な何かの風味がまろやかで上品な甘さを醸し出し非常に美味しくいただくことができました。和栗のモンブランは少し控えめで繊細な和栗クリームと和のイメージからなのか綿菓子を連想させる台の部分が程よく調和しており、付け合わせのベルガモットソースもいい感じのアクセントになっていて、さすがは素材の繊細なハーモニーを得意とするイデミ・スギノで修行された大山恵介パティシエならではの技と感服いたしました。アマゾンカカオシュークリームもかなり複雑な味で技巧が凝らされていることは理解できましたが、ルビーチョコが入っているのかはたまた何らかの柑橘類が使われているのかかなり酸味が強く感じられ、甘々クリームが好きな金次郎夫婦は少し苦手かなという感想でした。お店が混んでいることに焦ってしまいじっくり商品を選べない小心者夫婦の我々ですので、次回はもっとよく事前に調べた上でイデミ仕込みのムースなどをきっちり購入したいと思います。

さて、前回予告の通り「外交」(ヘンリー・キッシンジャー著 日本経済新聞出版社 )の紹介です。本当は17世紀から冷戦の始まりまでを解説した上巻とソ連崩壊・冷戦終結あたりまでを描いた下巻それぞれの内容を二回に分けて投稿しようと考えていたのですが、一読しただけでは皆さんの参考になる程の濃い中身にできる自信が無かったので今回は情けないですが概要に留めさせていただこうと思います。本書を貫く大きなテーマは、国益と力の均衡(バランスオブパワー)を最優先する欧州型外交と、世界に遍く自由を中心とする価値観がいきわたる手助けをしながら民主主義を広めることを目的とした米国型外交の相違を軸に近現代史における様々なイベントの背景を読み解こうとするもので、外交に関する20世紀最高の名著として挙げられるにふさわしい大変勉強になる内容でした。前者を推進した政治家としてリシュリュー、メッテルニヒ、チャーチル、米大統領ですがセオドア・ルーズベルトなどの事績と思惑が解説されていますが、何と言ってもこちら側のスーパースターは鉄血宰相ビスマルクです。地政学的に普通にしていると確実に強国になってしまうドイツ地域を抽象領邦国家に分裂させておくという欧州バランスオブパワーの要であった戦略にフランスなど周辺国が緩みを見せた間隙を衝いて機敏にドイツ統一を成し遂げ、その後も巧みな外交術でドイツの国力と外交上の存在感を向上させた手腕が高く評価されています。ただ、彼の外交があまりにも高いレベルの職人芸であったために、後任者達がその本質を理解することができず表面的に手法を模倣してしまった結果帝国が正しく運営されなかったという点は非常に皮肉だと思いました。

セオドア・ルーズベルトはモンロー主義で多国間関係から距離を置いていた米国に外交におけるバランスオブパワーの概念を持ち込んだ現実主義者として描かれていますが、その後任のウッドロー・ウィルソン大統領は国際連盟設立への呼びかけにみられるように米国の倫理観に基づく集団安全保障体制を提唱した人物として対比され、結果このウィルソン思想が20世紀米国の外交政策を貫く基本コンセプトで在り続けたと解説されています。力による平和を推進した強硬派のロナルド・レーガン大統領でさえ最も尊敬する政治家としてウィルソンの名前を挙げていたというのは意外でした。キューバ危機についての言及は限定的ですが、その前段のベルリン危機についての記載は詳しく、後に続く泥沼のベトナム戦争、ニクソン訪中、デタントから冷戦終結あたりの解説はまさに著者が政権中枢にいた時代の話であり臨場感充分の非常に示唆に富む内容となっております。現代に引き寄せても、足元のウクライナ戦争に繋がるソ連の拡張主義の背景や、対ロシア戦略を担うNATOがバランスオブパワーの欧州に米国型の集団安全保障体制が持ち込まれた構造になっている結果として完全には機能していない点などがよく理解でき興味深く感じました。これを書きながら拙い説明となっていることへのもどかしさを禁じ得ず、近いうちに必ず再読しようと思います。

「皆のあらばしり」(乗代雄介著 新潮社)は好事家が収集していた〈謎の本〉をめぐる高校生のぼくと胡散臭い中年男の会話で構成される物語ですが、先ずは乗代作品らしく中年男の博識と洞察に圧倒されます。怪しげなおじさんの小気味よいリズムでの人を食ったような、それでいて暖かみも感じる語り口にどんどん引き込まれているうちに、なんでこんなマニアックなストーリーで面白い小説が書けるのかという疑問はだんだんどうでも良くなっていきます(笑)。そして後半部では高校生のこの時期特有のきらきらした成長力にこれまた圧倒されるのですが、読後に残るのは心地よい敗北感でとても清々しい印象です。乗代先生は本当に巧い作家さんなので早いとこ金次郎の予想を実現し芥川賞を取っていただきたいところです。

「検察側の罪人」(雫井脩介著 文藝春秋)は、学生時代の恩人の娘が殺された殺人事件が時効を迎え、その有力容疑者だった男が別の殺人事件の捜査線上に浮かぶという状況で、主人公の担当検事がその職責と為すべき正義の間で葛藤しじわじわと越えてはいけないラインまで追い込まれる様が見事に描写された珠玉のサスペンスです。雫井先生は読者に感情移入させた主人公を心理的に追い詰めるのがいつも本当に憎たらしいですが(笑)、本作でもプロットが緻密に練られていて、ロジカルに逃げ道がふさがれてしまい意図せず自分ならどうするだろうと考えさせられてしまい、本当に疲労困憊の読後感となりました。どの程度のリアリティなのかは分かりませんが、あまり注目されることの無い検事実務の詳細もなかなか興味深かったです。そういえばキムタクとニノのキャストで映画化されたのが少し前に話題になっていましたが、「HERO」の久利生検事との演じ分けがどう仕上がっているか少し興味が湧いたので観てみようかなと思いました。

今日は朝から名探偵コナンの映画を観てきました。アニメとはいえ、どんどん登場人物の超人化が進んでいるのが気になります(笑)。毛利のおっちゃんが眠りの小五郎のやり過ぎで病院での麻酔が効かなくなっているのに笑いました。


読書日記ランキング

投稿者: 金次郎

読書が趣味の50代会社員です。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA