金次郎、友人の突然の訃報に呆然と立ちすくむ

今週は会社の同期の突然の訃報に接し、オフィス全体が声を失い呆然としている感じで日々を過ごしております。朝のウォーキング中の心不全という説明を聞いても全く頭に入ってこず、明るく懐が深くて心優しい、金次郎などより圧倒的にいい奴の彼がこんなに早く天に召されるという理不尽な現実を受け止めきれず、冷静な思考をするのがなかなか難しい状況です。数か月前に一緒に焼き鳥を食べ、「この店おいしいからまた来たい」と言っていた彼とはつい先日仕事の打ち合わせをしたばかりだったのに。。。どんなしょうもない発言も、関西人ならではの鋭い突っ込みを入れ拾ってくれた細やかな配慮や、いつも逃げずに弱いものを守ろうとする男気、誰に対しても全く偉ぶらないフェアで謙虚な姿勢など美点を挙げればきりが無く、自然な成り行きとして彼は本当にたくさんの人から愛されていました。ややこしい金次郎のこともちゃんと気にしてくれていて、いつも面倒をよく見てくれましたね。本当にありがとう、そして、心よりご冥福をお祈り申し上げます。気恥ずかしくてそういう彼のいい所を生前に直接言葉にして伝えられなかったことが今更ではありますが大変に心残りです。遅きに失した感は有りますが、少しでも彼の魂に届くよう、彼を知る仲間とそのような思い出を語って過ごす時間を作っていきたいと思います。

やや雑感パートが短めですが、今週はテンション上がらずで失礼いたします。さて、本の紹介に参ります。読書家を名乗るものとしてお恥ずかしい限りなのですが、あのベストセラーである「沈まぬ太陽」(山崎豊子著 新潮社 アフリカ編御巣鷹山編会長室編)を読んでいなかった不覚に日航機墜落から37年というニュースを見ている際にふと気づき、慌てて一気に読了いたしました。日本航空をモデルにした国民航空から、会社に盾突く危険人物かつ共産党員というレッテルを貼られてしまう主人公の恩地元は、共に戦った組合の同志との信義を貫き会社の要求を拒絶し続けた結果、パキスタンのカラチ、イランのテヘラン、ケニアのナイロビと執拗に西へ西へと左遷され続けます。現代の感覚では、バングラデシュ、イラク、モザンビークといった経済発展度合いの国々を10年以上転々とするようなイメージになるかと思いますが、当時の日本との往復のフライトの不便さなどを考え合わせるともっと過酷だったかもしれません。

家族とも離れ、孤独に耐えて精神に変調をきたしそうになりつつどうにか帰国を果たした恩地ですが、その後も墜落事故の後処理やこじれた組織の立て直しなど、信じられない苦難の数々がこれでもかと彼を襲う様が波乱万丈過ぎて、この物語に実在のモデルが存在することが本当に信じられません。ちなみにモデルである小倉さんがこの物語に関連するエピソードや1300時間にも及んだとされる山崎先生による取材の思い出、達観していて参考になる人生観などを語っている「自然に生きて」(小倉寛太郎著 新日本出版社)も必読の書だと思います。更にちなみにですが、会社の大先輩でカラチ、テヘランと駐在され〈準沈まぬ太陽〉を達成された方がいるのですが(会社に盾突いたわけでも勿論左遷でもありません)、カラチで社宅にしていたところがかつて小倉さんが暮らしていた正にその家だったとうかがい急にこの物語が自分に近いものになって迫ってきました。ケニアのサバンナで象やライオンを倒す狩猟の場面の描写も圧巻ですし(今はそんなことはできないと思いますが)、アフリカの女王との関わり合いもロマンチックではあるのですが、この作品の何より凄いところは、当時半官半民であった日本航空が如何にして利権として食い物にされ、結果として安全運航という最重要課題がないがしろになっていったか、という不都合過ぎる現実を、明らかに誰がモデルとなっているかが分かる登場人物達に再現させ、政官財の癒着構造を白日の下に晒し、欲に目がくらんだ人間の醜悪さをこれでもかと表現しきった勇気だと思います。広告収入減と様々な嫌がらせを敬遠してどこの出版社も出したがらない中で、自費出版の腹をくくった山崎先生も、病身を押してリスクを取り出版に踏み切った新潮社の編集者もどちらも気合が入っていて本物のプロフェッショナルだなと感じました。

今度はインドの話ですが、最近話題の「JK、インドで常識ぶっ壊される」(熊谷はるか著 河出書房新社)もついでに読んでみました。これからJK生活を謳歌しまくろう、タピオカ飲みまくろう、と期待に胸を膨らませていた中学生の女の子が、突然お父さんの仕事の関係でニューデリー駐在となり、食を含めた文化の違いや、アジアにありがちなスラム、野良犬、ウェットマーケット、インド固有のカースト制度などにカルチャーショックを受けつつも、若者らしく順応し逞しく成長していく様子が鮮やかに描かれています。一生髪を切らないシーク教徒の友達の髪に日本のヘアートリートメントを塗り込んだり、スラムの子供にドラッグを売らないでと訴えるデモをボランティア活動の一環で企画したりとなかなかの充実ぶりで、インド生活の最後の方はコロナが一番ひどい時期だったようでちょっとかわいそうではありますが、若くて多感な時期に異文化に触れ、しかもその経験を自分の中で整理して言語化するというのは本当に得難い貴重な経験で素晴らしいと思います。しかもこの著者の方はきっと学力もかなり高いのだろうなと文章構成や言葉選びなどからそこはかとなく感じさせるものがあり、是非日本を背負って立つリーダーとして活躍して欲しいなと、まるで老人のような気分で読了いたしました(苦笑)。

やっぱりちょっと元気が出ずいつもより短めになりました。次回には気を取り直してもう少し書けるよう頑張ってみます。

 


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投稿者: 金次郎

読書が趣味の50代会社員です。

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