金次郎、「プレバト!!」の俳句コーナーを絶賛する

テレビでニュースやアニメ、ドラマはそこそこ観る金次郎家ですが、最近めっきりバラエティ番組は観なくなってしまいました。読書やブログに割く時間が増えたこともありますが、とにかくクイズとカラオケ関連の似たような番組の多さに辟易してしまったというのが正直なところです。そんな中、録画してでも夫婦で欠かさず楽しみに観ているのが、以前このブログでも少しだけ書いた木曜夜7時TBSの「プレバト!!」内の俳句コーナーです。芸能人や有名人が番組独自の称号である永世名人を目指して昇級審査の結果に一喜一憂したり、季節毎に行われるタイトル戦で勝利すべく全身全霊で句作に臨む様子には、ネタ番組やトーク番組での視聴者にどう映るかという印象を意識しての演出的な振る舞いとは違い、純粋な俳句へのパッションを感じさせるところに結構心を打たれます。また、そういう著名人の意外な真摯さもさることながら、それを時にはバサバサと切り捨てる夏井いつき先生の明快かつ辛口な解説・添削の妙が本当に素晴らしい。30歳まで愛媛県で中学校の国語の先生をされていたという夏井先生ですが、一つ一つの助詞に至るまでの繊細かつ徹底した言葉選び、詠み手が描きたい情動を過不足なく表現しつつ読み手の多様なイマジネーションを喚起するという難題への飽くなき挑戦、俳句の詩的側面を捉えた韻律の美しさへの配慮など、十七音の可能性を見せつけられる伝道者ぶりに毎度圧倒されっ放しです。金次郎も仕事で同僚の文章に加筆、修正することが有りますが、偉そうに直している自分の未熟さに恥ずかしくなってしまい業務に支障をきたしそうです(涙)。まぁ業務上の文章で表現に拘り過ぎるとすぐに〈文豪〉とか〈格調高い表現〉とか言われてちょっとけなされ気味になるので会社では程々がよろしいのかもしれません。しかし、十七音+季語という制約条件が求める極限まで研ぎ澄まされた日本語表現の可能性への挑戦は、俳句という芸術の宿命であり、これを、〈有季定型〉、〈季語を主役に〉という基本に忠実に追及している夏井先生の俳句哲学が俳壇で左右両翼のどの辺に位置するものなのか、最近の動向と合わせ俳句王である宿敵Mに聞いてみたいと思います。そう言えばMはもうすぐ帰国されますね。

ちなみに、同コーナーは略略10年続いておりますが、永世名人は梅沢富美男(通称おっちゃん)、東国原英夫、フルポン・村上の僅か3名しかいらっしゃいません。おっちゃんの自意識過剰とキレぶり、東さんの創造への挑戦、村上さんの普通に喋るだけでウザくなれる才能には夫婦でいつも喝采を送っております。それに続く名人有段者はFUJIWARA・藤本、千原ジュニア、キスマイ・横尾(名人十段)、キスマイ・千賀(同八段)、中田喜子、立川志らく(同六段)、皆藤愛子(同三段)、ミッツ・マングローブ(同二段)、三遊亭円楽、岩永徹也、森口瑤子(同初段)と出演665名中永世名人と合わせたったの14名と狭き門ぶりがうかがえます。金次郎は千原ジュニアの作品が好きですが、同時に彼の才能に嫉妬してしまうので複雑です。そして、本業がそこそこしっかりされている他の有段者と比べ、その実力から俳句へのかなりの注力がうかがえる一方、王道アイドルというわけでも高MC力を見せつけるわけでもないキスマイの二人がこれからどうなっていくのか、心の片隅でいつも少し心配しつつ応援しております(笑)。

さて本の紹介です。「プレバト!!」の司会はダウンタウンの浜ちゃんですが、「吉本興業、カネの成る木の作り方」(大下英治著 講談社)によると、大阪NSCの1期生であるダウンタウン(デビュー当初のコンビ名はライト兄弟!)の才能は最初から群を抜いており、全くかなわないと思った同期生たちがかなり芸人の道を諦めたほどだそうです。せっかくなので、「吉本興業史」(竹中功著 KADOKAWA)と併せて読んでみましたが、今年創業110周年を迎えた吉本興業にまつわる様々なエピソードが紹介してあり二冊とも非常に興味深い内容でした。最近は生え抜きの社長が続いていますが、創業者の妻吉本せい、その弟で後に独裁的権力を握ることになる林正之助の姉弟確執、正之助と弘高の兄弟確執とそれに関連する東西対立など、オーナー企業にありがちな抗争の歴史もなかなか面白いです。更に、正之助の黒い人脈や、未だ未解決となっている中田カウスさん殴打事件のようなちょっと怖い方まで絡んでくる展開になると、正に事実は小説より奇なりの世界になってきます。その他にも、吉本の意向に反し勝手にNHKラジオに出演することを決めた初代桂春団治の収録をやめさせようと社員や芸人総出でNHKを取り囲んだものの、一枚上手だった春団治はその動きを察知し別の場所で収録していたという今では考えられない事件も紹介されています。所属芸人の系譜としては、上述の初代桂春団治、横山エンタツ・花菱アチャコの伝説のコンビ、最近亡くなった四角い仁鶴の笑福亭仁鶴などが戦後人気を集め、その後桂三枝(現文枝)、やすきよ、紳竜、さんま、ダウンタウンと続いていくわけですが、中田カウス・ボタンがアイドル漫才師のはしりだったというのには驚きました。

NSCを創設し弟子入りというパス以外に芸人になる道を開いて間口を広げた革新性や、タレントマネジメント、コンテンツ作りから劇場経営及びマルチメディア展開まで幅広く手掛ける視野の広さと柔軟性はさすがでビジネス的にも参考になります。その昔はなんと巨人軍の株主だったり、日本プロレスを興し力道山を擁してブームを演出したりとボーダーレスにエンタメに取り組むDNAが創業当初から脈々と受け継がれているのが凄いと思います。どうでもいいですが、インパルス板倉がロバートに一時所属していた話や、トミーズの由来は吉本社員の富井さんという話はちょっと心に残りました(笑)。

「丸の内魔法少女ミラクリーナ」(村田沙耶香著 KADOKAWA)にはクレイジーサヤカの世界をややマイルドめに堪能できる4編の短編が収められています。次々とふりかかる暮らしの中の難題を自分を魔法少女ミラクリーナと思い込む妄想を膨らませることで乗り切っていく茅ケ崎リナの奮闘、苦悩そして超克を描いた表題作は相当面白いです。36歳のリナは小3以来27年も魔法少女ごっこをやり続けており、周囲の人に貢献するというその使命をモチベーションとして同僚にも尊敬、賞賛されるポジティブな暮らしを送っていますが、親友で魔法少女仲間のレイコをモラハラ彼氏から守ろうとしたリナは、ひょんなことからその彼氏と一緒に魔法少女ごっこをするハメになり、その活動に疲弊して魔法少女引退に追い込まれることになります。この魔法少女ごっこのくだりは大変笑えるのですが、この彼氏が独善的で浅薄な正義を振り回す魔法少女への道を突き進んだ果てにこの物語がどういう結末を迎えるか、ぜひ読んで確かめられることをお薦めします。その他にも、ややストーカー気味に温めてきた初恋の人への思いを断ち切るために、その彼を数週間監禁するという恐ろし気な話が、まさかのいい感じのハッピーエンドになる「秘密の花園」も気に入りました。

来週は会社の合宿会議が予定されているのでいつも通り投稿できるかちょっと不安です。


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投稿者: 金次郎

読書が趣味の50代会社員です。

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