今年読んだ本の中で一番のおすすめ「遺伝子―親密なる人類史―」を紹介

先週発表された直木賞作の「少年と犬」(馳星周著 文芸春秋)を早速読んだのですが、選考委員の宮部みゆき先生も「動物ものはずるいよー」と仰っていた通り、ノアールの巨匠馳先生の作品としては若干微妙な内容だったかなと思います。犬の多聞を軸にした連作短編なのですが、それぞれに描かれる〈死〉に必然性が無く、それは大震災の犠牲者の方々が直面したであろう理不尽な〈死〉が意識されているのだろうとは思うものの、どうもつながりが見えにくい。。。犬と大震災を描く、というところから発想された物語で、上手く落とせなかったという感じですかね。「三つ編み」に続いて新井賞を取ったレティシア・コロンバニ先生の「彼女たちの部屋」(早川書房)が未読なのでこちらを楽しみにすることにします。

「遺伝子―親密なる人類史―」(シッダールタ・ムカジ著 早川書房 上巻下巻)はグレゴール・メンデルとチャールズ・ダーウィンに始まる遺伝学の歴史、現在遺伝子について解明されていることと遺伝子関連技術を使ってできるようになったこと、そしてこの技術の将来の可能性と課題について書かれた最高に面白い科学ノンフィクション作品です。これまで何冊か本を読んで断片的に頭に入れてきた遺伝子の構造や機能、それが作用する仕組みについて、統合的に理解するための軸を通してくれる内容で今年読んだ本の中で最も役に立つ一冊でした。ビル・ゲイツ絶賛というのも頷けます。と偉そうに言いつつ、よく理解できない部分も有り二度読んだのですが(苦笑)。

 

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