W川上先生の話題作を冬休みの課題図書にし、早速読了しました

昨日で仕事納めとなり、これから九連休です。とは言え、年賀状が手付かず、小掃除や買い物とそれなりにやることが有り、なかなか思うように読書が進まないのが年末年始ですが、今年はこのブログを始めたこともあり、重厚な積読を片付け、真面目、固い、あなたの良さが出ていない、との妻からの辛辣な批判を跳ね返す、面白い記事を書こうと意欲満々です(涙)。

先ずは、友人Mと取り決めた冬休みの課題図書を片付けるところから始めます。Mは本屋大賞順位予想で対決する読書ライバルで、このブログにもこれから度々登場することになると思います。

「夏物語」(川上未映子著 文芸春秋)は、静かな社会現象である非配偶者人工授精を切り口に、生まれてくることを自ら選択できないという子供の完全な受動性に光を当て、出産を通じてその責任を直接的に背負うことになる女性の様々な声をすくい取って、改めて社会や家族の在り方を問い直した、非常に考えさせられる作品でした。

正解の有るテーマではないと思いますが、やっぱり迷って悩んだ末に頑張って決断すること、自分の決断を信じて前に進もうと努力することが大切なのかな、と感じます。勿論暗いだけの話ではなく、会話文は関西弁が多くてなかなか笑えますし、シンプルだけどきちんと伝わるはきはきした文体はさすが芥川賞作家と唸らされます。‘言葉は通じるが、話が通じない人が多い’との表現にも大共感。

もう一人の芥川賞川上先生の「某」(川上弘美著 幻冬舎)は、性別、年齢、国籍問わず様々な人に変化できる謎の存在である’某’が、想像し、共感すべく努力し、自らを客観視しながら、感情や、生きること死ぬこと、そして愛情といった人間存在の本質を少しずつ手にして行く、不思議なファンタジー成長物語です。

クライマックスの場面はなかなか泣けるのですが、自分自身とは何によって規定されるのか、生きることの意味とは何か、への著者の強い思いが感じられる感動作です。この著者の本は初めてでしたが、あの「コンビニ人間」の村田沙耶香先生が強く影響を受けた作家さんというのも頷ける、設定の奇抜さ故にエッセンスが浮き彫りになる構造は、この世界を捉え直す新鮮な視点を与えてくれるので、他の作品も読んでみたくなりました。

投稿者: 金次郎

読書が趣味の50代会社員です。

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