あっと驚く叙述トリックのミステリーと、推理はおまけかな?の新感覚民主主義本格ミステリー

昨晩は学生時代の部活の集まりでお酒を飲んだため読書はお休みでした。50代を目前にした、それなりに責任有る立場の面々が繰り広げる無責任かつ不適当な会話の応酬は、まさに事実は小説より奇なりを地で行く感じで、本は読みませんでしたがフィクション感を堪能いたしました。ただ、飛び入り参加していた友人のご子息(14歳)の将来への悪影響が気がかりではあります。

さて本の紹介ですが、「黄」(雷鈞著 文芸春秋)は島田荘司推理小説賞至上最高傑作との評価に違わぬ読み応えで、今年読んだミステリーの中でも三本の指に入るおすすめ作品です。 冒頭で叙述トリックの存在が宣言されているので絶対に騙されない意気込みで慎重に読み進めたにもかかわらず、やはり、ん?、え!、とあえなく驚かされる結果となりました。

更に、聡明な盲人の青年が主人公のこの物語は、推理小説というジャンルの枠を超えて、様々な差別や偏見、それらと対峙する愛情や思いやりの力、について大いに考えさせられる深みのある内容で、何重にも重なる読後の爽快感がたまらない秀作です。ミステリー好きの方は勿論、そうでない方も騙されたと思ってぜひご一読下さい。

「神とさざなみの密室」(市川憂人著 新潮社)は保守系政権打倒を目指すリベラル活動家と外国人排斥活動団体に所属するネット右翼の男女が死体と共に密室に閉じ込められるという奇抜設定で、状況把握にやや時間を要する本格ミステリー小説です。民主主義とは何か、多数決の本質的メリットとそれを成立させる要件、等を説明しつつ、密室殺人=不可能犯罪的に難易度が高く見える、左右両主張の共存という課題についても頑張って解決策を提示しようとする姿勢と努力は買えますね。

ちょっと前に何回か読んだ、「多数決を疑う 社会的選択理論とは何か」(坂井豊貴著 岩波書店)を思い出してメモ見てみたところ、多数決という制度の意味やその限界の解説、より良い意見集約のための様々な選択肢の提示が為されており、なかなか参考になるなぁ、と今更ながら感心しました。

ボルダルール、コンドルセ=ヤングの最尤法、陪審定理、単峰性と中位ルール、等知らない言葉がたくさん出てきて面喰らいますが勉強になる本です。このところ話題の憲法改正に必要な衆参両院での2/3、国民投票での過半数という条件が一見高いハードルに見えるものの実はまだ低過ぎる、というのは目からウロコでした。

投稿者: 金次郎

読書が趣味の50代会社員です。

「あっと驚く叙述トリックのミステリーと、推理はおまけかな?の新感覚民主主義本格ミステリー」への2件のフィードバック

  1. 14歳男子は不適当な会話に参加できるのが楽しいお年頃なのでしょう、楽しそうでしたね。サバ読んでいた母の年齢がバレたのは誤算でしたが。
    「黄」昨夜読了しました。まさに、え?え?な結末でしたね。

    1. 初コメントありがとうございます!早速読んでもらえて嬉しいです!いや彼の年齢を見抜く力は本物ですよw

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