今年もよろしくお願いします 2019年読書振り返り(1月)

あけましておめでとうございます!

最初は、人間の幅広げてみる?的な軽い気持ちで手当たり次第に本を読み始め、ちょっと読書の質上がるかも?と感想を書くようになり、せっかくなので色々な本の面白いところを紹介しちゃおうと昨年末からこのブログを始めるに至りました。私の趣味がかなり偏っているので若干心配ですが、読んで頂いているみなさんに少しでも参考になれば嬉しいです。

年始にあたり2019年の読書を振り返ってみると、なんと340冊読んでおりました!ただ、悲しいことにリストを見ても内容を忘れてしまっている本もそれなりに有り、今年はこのブログで書くことも意識して一冊一冊をじっくり味わって読んでみようと思います。

それでは、まず2019年1月に読んだ中で特に印象に残った本を簡単に紹介します!

「神々の流竄」(梅原猛著 集英社文庫)、「神々の体系」(上山春平著 中公新書)

この二冊は主に古事記についての論稿で、その成立の背後に隠された藤原不比等の深謀が明快に説明されています。持統→文武、元明→聖武の皇統を正当化するための天孫降臨説話や神代の直系相続説話の挿入、巧みに持ち上げられる外祖父の地位など、その後1200年続く藤原レジームを支える支配の理念が見事に古事記の中に盛り込まれていて驚くばかりです。昔から謎だった稗田阿礼の存在も=不比等ということですっきりです。

不比等についての小説である「天風の彩王」(黒岩重吾著 講談社文庫)を並行して読むとより理解しやすいです。鎌足の栄達はあったものの、新興氏族として決して恵まれたポジションにいたわけではなかった不比等が、更に壬申の乱で窮地に陥りながらもその才覚と忍耐そして政治力で、昭和まで続く支配体制の基礎を作り上げる様は圧巻です。

「株主総会」(牛島信著 幻冬舎文庫)、「買収者」(同)、「少数株主」(同)

いずれも大木弁護士を主人公とするリーガル経済小説で、特に1997年に出る版された「株主総会」は日本企業が株主重視の経営に転換して行く流れを先駆的に捉えた作品で印象に残る株総の場面含め、臨場感とリアリティ有りです。2000年の「買収者」では当時としては目新しいTOBを扱い時代の先を見通す慧眼ぶりを発揮しており、そういう意味で近著の「少数株主」で非上場企業の少数株主の権利や相続に絡むリスクに光が当たっていることの示唆するものについても一考の価値有りと思います。会社経営や買収に関する法律の問題にとどまらず、株主や経営者、従業員とその家族などステークホルダー の内面にも踏み込んで描写しているところが普通の経済小説には無い深みを生んでいて、牛島作品の魅力になっています。

地政学者イアン・ブレマー先生が紹介されていたので読んでみた「高い城の男」(フィリップ・K・ディック著 ハヤカワ文庫)は第二次大戦で枢軸国が勝利した世界を描いた歴史改編SFです。 ストーリーの中で連合国側が勝ったという設定の小説が流行しており、読者は二重の総体化を通じて形而上の世界に引き込まれて行くので最期の方はやや難解で混乱しますが、人種的にも思想的にも特徴有る登場人物が何を指針にどう生きようとしているか、に注目すると、 非常に面白い群像劇として読み進められると思います。 今日のキリスト教にあたる精神的な行動指針に中国古典である「易経」が取って代わっている設定もなかなかよくできています。

これを書きながら見ていた紅白は、氷川きよしから聖子ちゃんの出番でしたが、かなりの見応えでした。

投稿者: 金次郎

読書が趣味の50代会社員です。

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