金次郎、過去のお店予約間違いトラウマ記憶を思い出す

先日このブログで紛らわしい店名事件について書きましたが、友人夫婦が改めて来日する機会を捉えリベンジしようということで満を持して鯖のマリネが大名物である恵比寿のAbbessesを予約して訪問してきました。当たり前なのですが、やはり数年前によく通っていた頃の記憶そのままのカジュアルビストロというお店のたたずまいは明るくリラックスできる雰囲気で、先日間違って訪問してしまった代官山abysseの深海のような真っ暗なイメージとは完全に真逆で、我ながら間違えるにも程が有るなと苦笑を禁じ得ませんでした。お店の人に間違ってabysseに行っちゃったんだよねー、としれっと申告してみたところ、雰囲気100パー違いますよねとの冷徹なリアクションで、はいごもっともでございますと彼のドン引きを謹んで甘受いたしました。この友人との会食自体は鯖マリネも堪能でき、美味しく楽しく終了したので良かったのですが、記憶の扉が開き、また別のお店間違いのヤバい話を思い出したのでここで書いてみることにいたします。

それは今から15年程前の、金次郎が営業の現場でバリバリと働いていた頃のお話です。残業前の腹ごしらえに軽く食事をした後にオフィスで黙々と残務をこなしていたところ、客先との接待で退社済みの部長の電話がけたたましく鳴り響きました。ロクな要件でない可能性は無限に思い浮かびましたので、しばらく知らぬふりを決め込んでみたのですが、電話は何度も何度も繰り返し掛かってきます。緊急事態の懸念も有りやむ無く応答したところ、想定していたのとは全く違う種類のトラブルで、片言の日本語でひたすら怒鳴りつけられるという謎の事態に面食らいました。とにかく全く要領を得ず非常に往生したのですが、辛抱強く先方の訴えを聞いているうちに、①やっぱりお前らは来ないのか、②だから何度も確認したのに、③うちはそんな接待をするような店じゃないって説明しただろう、の3点にその主張が整理できることが次第に明らかになって参りました。それでも尚、依然として事態が飲み込めずぽかーん状態の中サンドバッグのようにクレームの連打を浴びておりましたが、さすがにどうしようもなくなり一旦電話を切って善後策を考えていたところに、部長と共に客先との接待に出かけていた直属の上司から連絡が入り、なんと謎のお店から会社宛てに連絡が入っていないかとエスパーのようなコメントをするではありませんか。はいはい入りまくっていますよと惨状について報告したところ、詳細は後で説明するからすまんがその店に行って一通り飲み食いしておいてくれとのこれまた不可解な指示を受けました。意味もよく分かりませんし、そもそもお腹もいっぱいな上に仕事も残っており、しかもガミガミキレられたお店に食事に行きたい気分では全くありませんでしたが、その切迫感にただならぬ物を感じましたし、何はともあれ上司命令ということで意を決して周囲の同僚と連れ立ってそのお店に連絡し向かうことといたしました。辿り着いてみると、それは湯島、不忍池、上野エリアの間に存在するなかなかにいかがわしく場末感漂う街並みの中にひっそりとたたずむ中華料理店で、確かにお店の人の言う通り100%接待に使えないたたずまいであることは間違い無く、妙に納得いたしました。気まずい雰囲気の中おずおずと注文しだらだらと飲み始めたところに、接待を終えた上司が駆けつけたので背景を聞いてみると、まだネットや食べログの使用も普及していない時代の話でありがちではあるのですが、接待用に予約をしておいてと部長秘書さんが部長から渡された電話番号が微妙に1番違いで間違いだったようなのです。不運なことに予約しようとしたお店も片言の外国人が対応するのも全くおかしくない本格中華料理店であったために、微妙な違和感は残りつつも間違ったお店への予約のみが入った状態で話が進んでしまったという顛末でございました。しかし、場末の見本のような雰囲気のお店で、うちで接待するなんておかしいと、片言ながらも予約時に何度も確認したくなった店員さんの心情も重々理解できましたし、ずっと心配しながら待った挙句に結局ドタキャンされてしまったことへの憤りにも物凄く共感できましたので、平謝りに謝りながら、皆でたくさん食べて飲み、きちんと接待分ぐらいの料金をお店に支払って帰りました。皆さんも気になっていると思いますが、実際の接待の方はと言うと、当然その本命店には部長の予約は入っていなかったものの、悪いことに金次郎と同じ会社の別グループによる予約が入ってしまっていたために、部長以下の我が上司たちは何の疑念も抱くこと無く、会社名を告げて通された個室で接待先の到着を待っていたとのことでした。ところが当然の成り行きとして、不審感丸出しの見知らぬグループが非常に頻繁にその部屋をちらちら覗きに来る事態となり、ややキレ気味にあなた方失礼ではと真意を匡したところ、申し訳無いがこの部屋はうちが予約していると言われ、確認するとその通りで失礼なのはこちら側で、いみじくも我々と同じく平謝りすることになったそうです(汗)。その後の対応はさすがは商社マン迅速で、瞬間的に近所の接待好適店を予約し、中華料理店に到着寸前であった客先をぐいぐいと別のお店に誘導し事なきを得た(?)ようなのですが、大変な不幸が重なった一日でございました。それからというもの金次郎は、どんな飲み会の予約でも、必ず前日にお店に電話を入れ予約の確認をするのが強迫観念的な習慣となっています。ネット時代にそんなことする人いない、というようなリアクションをされることも多いですが、これはトラウマなので死ぬまでやめられないと思います。

前置きが異常に長くなってしまいましたので、本末転倒ではあるものの簡単に本の紹介です(笑)。「投身」(白石一文著 文藝春秋)はちょっとした悪戯心からの悪ふざけが原因で恋人を死なせてしまった後悔から、自らの生きる資格を徹底的に否定し諦念と虚無を全身に纏った主人公と、功成り名を遂げた資産家が交わした奇妙な契約という謎を中心に展開する物語です。あまり多くは語れませんが、人間の生への執着の凄まじさをまざまざと見せつけられた白石先生らしい衝撃作でした。様々な執着が描かれているのですが、登場人物の一人が異常なまでに洗車に執着する姿が滑稽でもあり、映画化される「正欲」(朝井リョウ著 新潮社)で描かれた水流フェチと相通じるものを感じました(笑)。

「半導体産業のすべて」(菊地正典著 ダイヤモンド社)は元NECの技術者である著者が、とかく複雑で分かりにくいものの、今後の日本の産業構造の一つの核となる半導体について、開発・製造・販売それぞれの領域のキープレイヤー並びに、製造工程別の業界地図等について詳細に解説されている素晴らしい導入書です。後半では、やや専門的な半導体そのものの構造や電子機器内部での機能についても説明が施されており、年末年始の課題図書としている「半導体戦争」(クリス・ミラー著 ダイヤモンド社)の読破と理解深化に向けた準備として最適な内容でした。これからも教則本として何度も読み返すことになると思います。

以前紹介したOKAGEYUという入浴剤はひと風呂800円と銭湯レベルを軽く超える高コストですので頻繁には使えず、代わりにエプソムソルトというマグネシウム塩の入浴剤を使っております。非常に身体が温まる効果が強くこの季節にはお薦めです。

読書日記ランキング
読書日記ランキング

投稿者: 金次郎

読書が趣味の50代会社員です。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA