金次郎の若かりし日のカラオケの思い出

月日の経つのは早いものであっという間に12月となり、記憶力も衰え自動的に色々と忘れてしまう年頃ではあるものの(涙)、忘年会の季節です。しかし、コロナとなって本当に行かなくなってしまったのがあんなに大好きだったカラオケ。かつては忘年会時期に限らず必ずと言っていいほど2次会に繰り出していたというのに、コロナ&読書&ブログのプレッシャー三重苦によりこのところ完全に選択肢から外れてしまっており飲み会に参加しても1次会で終了というパターンが殆どで、もはや大声で歌唱するために必要な筋肉は全く残っていない気がします。思い返せば、金次郎がまだ駆け出し営業パーソンの頃には、カラオケ好きの顧客の接待で50代のおじさんと20代前半の金次郎がカラオケスナックで夜8時から深夜1時までサシで順番に歌い続けるような惨事も頻繁に発生しており、当時は鋼鉄の喉を誇っておりましたので寂しい限りです。

勿論接待カラオケにはそれ以外にも様々な苦行がつきもので、スナック常連たちとの生温い褒め合いの応酬、止め処なく続く植木等の♪スーダラ節など昭和歌謡への手拍子無限地獄、♪ChooChooTRAINを歌い踊って疲れ果てた身体に鞭打って命を削って食べる丑三つ時からの油そばなど枚挙に暇が有りません(涙)。そんな感じで歌う機会が多いせいか、金次郎の会社にはカラオケ好きな人が多く、カラオケスナックでスカウトされ自費でCDを出し、深夜テレビで特集された先輩、お父さんが演歌歌手で遺伝なのか声が大き過ぎるために口とマイクを50cm離して歌う先輩、若かりし頃の尾崎豊と共にカラオケに行ったことが有る先輩、酔っぱらってしまうと勝手にB’zの♪ultra soulを20回連続で入力しそれを全員で歌うことを強要する先輩、巨体の上半身を激しく楕円軌道を描いて回転させながら、自らが作詞作曲した♪真っ赤なTシャツという楽曲(ちなみに真っ赤なのは激しい出血のため)をアカペラで歌い狂う先輩、♪家族になろうよの替え歌である♪社長になろうよ(金次郎作詞)を自らの持ち歌として歌い続けるサラリーマンシップ溢れる後輩など、歌うまから面白系までなかなか個性の強い面々が揃っていたと思います。と言うか動物園ですね(汗)。面白系だけでなく、非常に歌の上手いのど自慢の人も多く〈カラオケ四天王〉と呼ばれている精鋭もいて、うち一人は平尾昌晃カラオケ教室に通って腕を磨いたというエリートで、その歌唱法から〈ビブラートの帝王〉の二つ名で有名でございました(笑)。平尾先生が亡くなられた際には多くの弔電ならぬ弔メールがカラオケ仲間から届いたそうです。かく言う金次郎も全盛期には10日で14回カラオケをこなしたことも有り、前世紀の話ですが中国の奥地でカラオケシステムの最新曲が♪北国の春という絶望的な状態に耐えながら、白樺青空南風のフレーズを延々と繰り返し歌ったのが懐かしい。また、韓国ソウルでは聴衆からカス!カス!と言われる激しいディスりに心が折れそうになりましたが実はカス=歌手という賛辞だったと知り気を取り直すなど、第二の故郷シンガポールを本拠地としつつアジアを中心に世界中でカラオケを歌った国際派シンガーですので(笑)、この投稿を機に少しだけカラオケ活動を再開してみようかと思います。と言いつつ誰の何を歌うべきかから勉強し直しなので気が重いですが。。。

さて本の紹介です。読書の大先輩に薦められて読んだ「森へ行きましょう」(川上弘美著 文藝春秋)は一言で言えばパラレルワールドのお話です。同じタイミングで同じような家族の下に生まれた留津とルツという二人の女の子の人生が交互に語られる構成になっていて、分岐点での些細な選択の積み重ねやちょっとした運命のいたずらによって、二人の人生の軌跡がどんどん乖離していく様子が印象的です。同じタイミングで同じ場所から同じ森に入っても、冒険者が辿ることになる経路が全く違う様子になぞらえたタイトルが物語の中身をよく象徴していますが、その物語世界に浸りつつも自分自身の来し方とたくさんの分岐点について思わず知らずのうちに振り返って浸ってしまうというこちらもパラレル的な感覚を味わえるこれまでに無い読後感を得られた小説でもありました。様々な判断をするのが怖くなるような、出会うべき人には必ず出会うという勇気をもらえるような、はたまた過激に道を踏み外したケースが提示されてやっぱり怖くなってしまうような、そういうことも全部ひっくるめて人生を楽しんでやろうという前向きな気分にさせられるような、とにかく何とも形容し難いのですが多くのインスピレーションを得られるお話なので、ぜひご一読されることを金次郎としてもお薦めいたします。

「創作の極意と掟」(筒井康隆著 講談社)はありとあらゆる創作作法の試行錯誤を繰り返してきた巨匠が、凄味/色気/揺蕩/破綻/濫觴/表題/迫力/展開/会話/語尾/省略/遅延/実験/意識/異化/薬物/逸脱/品格/電話/羅列/形容/細部/蘊蓄/連作/文体/人物/視点/妄想/諧謔/反復/幸福という31のテーマで小説表現について解説した有り得ない程貴重な一冊です。金次郎もいずれビジネスの世界を卒業し表現の論理性を無視して良い立場になった暁には、ここでの解説を参考にして物書きを目指そうと勢い込んで読みましたが、最初の凄みと色気を出すだけでも全く手が届きそうになくスタート地点のだいぶ前から心が折れそうで辛いです。

同じく筒井作品ですが、「家族八景」(同 新潮社)は火田七瀬三部作の最初の作品ですが、人の心の中を読み取ることのできる精神感応能力者(テレパス)の主人公七瀬が、極力その能力に気付かれぬよう住み込み家政婦として様々な家庭を転々とする姿とその苦悩を描いた連作短編集となっています。どんどん相手の穏やかならざる感情が自分の心に流れ込んでくるにも関わらず、特殊能力者として攻撃される事態を避けるべく気づかぬふりでやり過ごさねばならない七瀬の苦悩や、本音と建前を使い分けながらも激しい憎悪、欲望、嫉妬といった激情を噴出させる人間の醜悪さが妥協無くこれでもかと徹底的に描かれており、単なるSF作品の枠を完全に超えて人間の本質を引きずり出した名作だと感じました。しかし、出てくる八家族がとにかくおぞましく途中で読むのをやめようかとも思うのですが、絶対にやめさせてくれないストーリーの引力が凄まじく一気に読了してしまいました。直木賞候補入りしたのも至極当然であり、確かにこれで取れなかったのなら筒井先生が直木賞選者及びその選考プロセスを恨むのも理解できました(笑)。ちなみにその恨みが爆発しているのが「大いなる助走」(同 文藝春秋)で、直木賞候補入りした作家の卵が受賞するために選者に対してあらゆる便宜を図ったにも関わらず落選となり、精神に異常をきたして、とんでもない要求をしてきた選者たちを殺しまくるという恐るべき展開の作品です。今は廃れた地方同人誌について描かれているのも興味深いですが、この作品が文藝春秋から出ているのが凄い(笑)。

先日妻が買ってきたリリエンベルグのシュトーレンを行きつけのイタリアンのシェフにお届けしたところ、営業時間前のお店でのお茶に誘われ、図々しくも夫婦で出かけてみると、イタリア直輸入最高級のパネトーネでもてなしていただくという僥倖に恵まれました!シェフに最高の焼き加減で仕上げていただいたパネトーネがマンダリンオレンジのオレンジピールの風味が際立つ至高の代物で、イタリアのクリスマス気分を堪能することができました。

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投稿者: 金次郎

読書が趣味の50代会社員です。

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