25年前の恥ずかしい書類を発見!+2019年6~7月振り返り

オフィス引っ越しを前に、会社の机の中を片付けていたところ、どういうわけか25年前の就活時に会社に提出した書類(今で言うエントリーシート)のコピーが発掘されました。 恐る恐る完全に忘れてしまっているその中身を見ると、予想通り非常にマズい内容のオンパレード。こんな内容でよく内定もらえたものだと当時の人事担当の方の度量に感謝でした。

ちなみに不適切ポイントとしては、①写真が斜めに貼ってある、②学生時代の活動で印象に残っている点を記載する欄に、やたら感傷的に部活の大会の打ち上げでやったビールかけの思い出が綴られている、③「まぁ、・・・」等の不適当な口語表現が散見される、といったかなり不真面目なもの(汗)。

「日焼けした肌にビールがしみる痛みの思い出は、何かを思い切りやり切って得られた達成感の原体験として、私のモチベーションの源泉となっています。」なんのこっちゃ!ご迷惑をお掛けした会社の先輩方、金次郎に偉そうにされた後輩の皆さん、本当にすみません。

さて、金次郎の恥ずかしい話はこの辺にして、最近読んだ怖い本の感想と昨年6~7月の振り返りを。

先月読んだ「つけびの村 噂が5人を殺したのか?」(高橋ゆき著 晶文社)は、2013年に山口県の限界集落で発生した連続殺人放火事件の背景を調査したルポルタージュです。

村民12人のうち5人が殺害されたこの事件、〈つけびして 煙り喜ぶ 田舎者〉という何とも気持ち悪い謎の犯行予告川柳が話題になりましたが、著者の丁寧な取材によって、 先祖代々の人間関係が濃密に凝縮されていて単純に人が少なくて住むのに不便というだけでは片付けられない過疎限界集落の闇、そんな閉鎖空間で住民を追い詰める消えない噂話の恐ろしさ、等など身震い必至の事実が少しずつ浮かび上がってきます。拘置所での犯人とのやり取りは臨場感有って没頭して読んでしまいました。事実は小説よりも恐ろしい。

【2019年6~7月に読んだおすすめ本の紹介】

◆「戦争と平和」(レフ・トルストイ著 岩波文庫)

サマセット・モームの世界10大小説にも選出されている知らない人はいない名作ではありますが、 あまりに長編なため実際に読んでいる人は意外と少ないのではないかと思います。

トルストイの歴史観、すなわち後世の歴史家が後付けした〈少数の英雄や天才によって切り開かれた歴史〉の全否定という立場が繰り返し強調され、代わりに歴史の担い手とされる市井戸の人間ひとりひとりに確りと焦点を当てる表現が徹底されていると思います。この姿勢が550人超という登場人物の多さに繋がっているわけですが、全く重複感を感じさせずにそれぞれを鮮やかに描き分ける筆力はまさに文豪。複数の人から、この大作を読んで得たものは?と聞かれましたが、自分の想像空間の枠をぐっと拡げられたことが一番かな、と今は感じています。

「白鯨」(ハーマン・メルヴィル著 新潮文庫)

こちらも10大小説入りの名作です。 エイハブ船長と白鯨モービー・ディックとの死闘というイメージ有りますが、 19世紀捕鯨産業事典的性格が強く、読み通せない人が多いというのもこの辺が原因と思われます。

石油の普及以前は様々な用途で鯨油が活用されており、蘭仏英米人が世界の海で鯨を乱獲していた様子が描かれています。捕鯨船への補給地確保というペリー提督の 開国要求の背景が実感できると共に、最近の捕鯨についての議論とCO2排出規制の後進国への強要に同じ構造が透けて見えて苦笑です。

「悪童日記」(アゴタ・クリストフ著 早川書房)

複数の作家さんが絶賛されていたこの本は、主人公の双子の男の子の視点から第二次大戦末期のヨーロッパを日記形式で描いた作品ですが、 シンプルな文体での事実のみの描写で淡々と描き出される悲惨な世界が、 少年たちやおばあさんの揺るがぬ軸で切り取られ、物事の本質が抉り出されるさまはとにかく素晴らしいの一言。

真の客観視を見せつけられて、内省とか物事の本質とか偉そうなことを言っている 自分の至らなさが恥ずかしくなります。 ユーモア的に笑える場面にも笑えない深みが有るところも唸らされる読み応えで、 子供には読ませられない内容を含みますが、大人で未読の方は是非読まれることをお薦めします。これを読んでしまうと、三部作なので「二人の証拠」(早川書房)、「第三の嘘」(同)も読まずにはいられません。

「レトリック感覚」(佐藤信夫著 講談社学術文庫)

少し古い本ですがかなりはまって一気に読みました。うさんくさい説得技術のイメージ有る修辞について、修辞には認識の発展的造形の役割が有る、すなわち認識をありのままに表現するためにレトリックが必要、とか、 言語は本質的に虚偽を含み、誇張は嘘の明示性により悪徳でない、等の哲学的分析がなされており、個人的にはかなりツボでした。

比喩を中心に名作中の表現を引用しながら解説してあるので、美しい文章にたくさん触れられて嬉しいですし、直喩や隠喩、換喩や提喩以外にも誇張法や列叙法等の技術をその効果と共に紹介してあって、ちゃんと勉強したことが無かったこともあり、これからの読書の糧になる内容でした。

2月10日はお休みをもらって4連休になるので、たくさん本が読めて嬉しいです。いつも2月は28日しかなく目標にしている月25冊を達成するのが苦しい月なのですが、天皇誕生日が2月に移動してきてくれたので、今年は閏年ということもあり何とかなりそう。

投稿者: 金次郎

読書が趣味の50代会社員です。

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