「イモータル」(萩耿介著)は何度読んでも意味不明

ネットで見つけた記事ですが、なんとアメリカ人の14%がパスワードにcovidを使っているとのこと!毎日10万人以上感染しても気にせずマスクレスの人も多いアメリカらしいと言えばらしいですし、目的不明のフェイクニュースかもしれませんが、その記事にはtrumpが12%、bidenが9%使われているとも記載有り、こちらはなんとなく信じられるような気がします。誕生日やペットの名前を押さえてのパスワードトップは万国共通で鉄板の123456とのことで、やはり人類みな兄弟ですね。

アルツゥール・ショーペンハウエルの「読書について」(PHP研究所)を読み、読書は他人の頭を借りているだけなのでその後の反芻やoutputをしないと無意味、紙の上に書かれた思考とは砂の上の足跡以上のものではない、などなどの厳しいお言葉を頂戴し、本日非常に真面目にこのブログに取り組んでおります(苦笑)。カントを師とし、〈超人〉ニーチェに多大な影響を与えたショーペンハウエルはその後一世を風靡したヘーゲルと激しく対立して不遇をかこうこととなります。彼の〈認識論〉がインドのウパニシャッド哲学から影響を受けたというのはなんともグローバルですが、そういえばそんな小説が有ったなと思い「イモータル」(萩耿介著 中央公論新社)を読み返してみました。現代日本とインド、17世紀のムガール帝国、そして革命期のフランスを舞台に、宇宙普遍の原理であるブラフマンへの思いや憧れに衝き動かされて生きる魂=本質の表象としてのアートマンを描く、古代インド起源のウパニシャッド哲学を題材にした非常に壮大かつよく分からないお話です(笑)。内なる自我の本質たるアートマンを突き詰める中で、真理ブラフマンとの融合〈梵我一如〉を追求する物語が綴られていると思うものの、自分でも何を書いているかよく分からないので、全くナイスな紹介になっておらず恐縮ですが、もう少し修行して三度目読んだら理解できることを信じ、今回はこの辺にしておきます。

「神の時空シリーズ」(高田崇史著 講談社 全8巻)は、歴史ミステリーですが、通説とされている歴史観を覆し、更にその奥に隠された謎を解き明かす内容となっていて、読んでいて何度も〈なるほど〉と唸らされる作品です。伝統的な神道と怨霊信仰に民俗学的要素を加えて、明治維新以来150年余の西洋化・近代化を通じて日本人が失った古来の〈常識〉に改めて光が当てられており、目からうろこの連続で知的好奇心がかなり刺激されます。例を挙げると、怨霊が祀られている神社は参道が折れ曲がっていて必ず川を渡る構造になっている、妖怪一つ目小僧と古代製鉄業との関係、〈祀り上げる〉や〈担ぐ〉という言葉のネガティブな響きの真の意味、〈稲荷〉とキツネが関連付けられる背景など、本当にたくさん驚かされました。もう少し身近なところでは、地名の由来にもなっている目黒不動尊、目白不動尊ですが、目赤、目青、目黄も存在しているのを東京在住30年で初めて知りました。どうやら、街道の入り口で江戸の町を守っている道祖神同様結界的な働きをしているということのようです。たくさんの人が亡くなった場所に桜を植えることで、花見の見物人を集めて地面を踏み固めさせ、霊魂を地面の下に封じよう、という意図が有ったというのも(埋め立て地などで物理的に地盤を固める目的も勿論有ったでしょうが)なかなか衝撃的でした。

同じような内容ですがもう少し学術的なのが「隠された十字架 法隆寺論」(梅原猛著 新潮社)です。この本は、法隆寺が聖徳太子とその一族の怨霊を鎮めるために建立された寺院である、との主張を軸に7-8世紀の歴史を検証し法隆寺にまつわる様々な謎の解明を試みた名著です。藤原鎌足・不比等親子が如何に巧みに権力基盤を構築したかに始まり、秘仏救世観音製作の意図、法隆寺精霊会と能の関係にまで思いを巡らす内容の広範さは圧巻です。著者が歴史の専門家でないところがまた凄い。2021年は太子没後1400年ということですので、コロナでどうなるか分かりませんが、一生に一度見られるかどうかの法要にぜひ参加したいところです。

こうなったら歴史関連の本で最後までということで、「日本史のなぞ なぜこの国で一度だけ革命が成功したのか」(大澤真幸著 朝日新聞出版)を紹介です。金次郎はこの本を二回繰り返し読んで、漸くこれが普通の歴史本でなく、日本の社会システムに伏在する統治の仕組みとその変革の可能性について論じた内容だとなんとか理解できました。乙巳の変でも明治維新でもなく、また後醍醐天皇や織田信長によるものでもない、意外な人物によって達成された〈革命〉とその革命的性格の根拠を中国や西欧の革命との比較、イエス・キリストの革命性、歴史的な天皇制の政体における位置付けなどにふれながら解説されています。後半の論理展開が込み入っていて、読んで頂ければ金次郎が二度読むはめになった理由がご理解頂けると思いますが(笑)、難しいながらも新たな視点が得られるという点で非常に興味深い内容でした。

そろそろこのブログも1年になりますが、次回はこの1年の人気記事ランキングを発表しようかな、と思います。

投稿者: 金次郎

読書が趣味の50代会社員です。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA