年末年始に乱読した本のご紹介、特に「52ヘルツのクジラたち」と「推し、燃ゆ」が推し!

しばらく前に翠江堂のいちご大福についてとても美味しいと書きましたが、今が旬のいちご大福、金次郎のおすすめ店をもう一軒紹介します。とは言え、既に紹介するまでもない有名店なのでご存知の方も多いと思いますが、我が故郷の誇る鈴懸です!東京には、新宿伊勢丹とミッドタウン日比谷に入っていますが、これまた福岡名産のあまおうを上品なこしあんと柔らかい求肥で包んだいちご大福は絶品です。緊急事態宣言直前のぎりぎりのタイミングで日本橋三越に催事で出店されており、今年もどうにか旬の味覚を堪能することができました。11月~4月の季節限定品とのことなので、何とか早くコロナに落ち着いてもらって、4月までにもう一度食べたいところです。

甘味と言えば、去年コロナ影響で銀座四丁目交差点の鹿の子が閉店されたと知った時は夫婦揃って呆然としてしまいました。銀座三越に入っている販売店では持ち帰り用のあんみつが買えるようですが、やはりあのお店で食べる絶品鹿の子あんみつとは比べるべくもありません。何度でも温かくて美味しいお茶を注いで下さるホスピタリティ溢れる店員の皆さんにもうお会いできないかと思うと、コロナへの負の感情が高まり過ぎて、呪術廻戦で言うところの呪霊になってしまいそうです。ちなみにアニメ呪術廻戦は非常に面白いので未だの方は是非一度ご覧ください。

年末年始にやることが無く、猛烈な勢いで本が読めたのは良かったものの、あの本もこの本も紹介したいと思いつつ感想メモを書くのをサボっていたら、だいぶ内容が朧気&感想が薄れ気味になってしまいました。。。なので本日は質より量ということで失礼いたします。

王様のブランチBOOK大賞を受賞した「52ヘルツのクジラたち」(町田そのこ著 中央公論新社)は、声無き叫びもきっと誰かに届くから諦めずに叫び続けよう、そしてその叫びをキャッチするために自分の心の傷から目をそらさずに、その痛みときちんと向き合おう、という強いメッセージを感じる感動作です。若干ご都合主義的なところも無くは無いですが、謎で読者を引っ張るプロットもよく練られていて、流石はブランチ良い本を見つけてきますね。今週21日に予定されている本屋大賞候補作にノミネートされる可能性が高いと思います。

「全部許せたらいいのに」(一木けい著 新潮社)は、愛とは定まった形の有る概念ではなく具体的行動であるとよく言われますが、それが故に多様な形を取る愛の姿が悲しいすれ違いを生むという、愛というものの本質に迫ろうとした著者の思いが伝わってくる読み応え充分の作品でした。「愛を知らない」(同 ポプラ社)も同様のテーマで描かれていて面白く読めるのですが、誰がどう主役なのかがちょっと分かりにくく、読後感が混乱したところが少しだけマイナスポイントでした。

しかし、「52ヘルツ」もそうですが、本当に最近は虐待をテーマにした作品が溢れていてやや食傷気味です。そんな中にあっても「あの子の殺人計画」(点禰涼著 文芸春秋)は精緻なプロットとストーリー展開で一気に読まされ騙される印象が強く、ミステリーとしての面白さが虐待の辛さを上回って総合的には○という感じです。名前は似ていますが、「あの日の交換日記」(辻堂ゆめ著 中央公論新社)は交換日記をモチーフにした連作短編ミステリーで、頭脳派の著者が練りに練った技巧に優れた作品で、ミスリードも効いているし、ちりばめられた謎も最後はすっきり解決するし、虐待が出てこない上に(笑)ちゃんと感動もできて、きちんと楽しめる秀作だと思います。

「赤ずきん、旅の途中で死体と出会う」(青柳碧人著 双葉社)は、日本の昔話を下敷きにし昨年の本屋大賞候補にもなった「むかしむかしあるところに、死体がありました」の著者が今度は西洋の童話を連作短編ミステリーに仕立ててしまうという荒業をやってのけた作品です。探偵役の赤ずきんが、シンデレラやヘンゼルとグレーテルの世界で様々な謎を解き明かし、最後はマッチ売りの少女と、、、という読まずにはいられなくなるわくわく感溢れる内容になっています。話がどう改編されるのかも気になって引き込まれますし、企画ものに終わらない高いレベルの謎解きが読者を飽きさせません。お薦めの一冊です。

ミステリーばかりでなく純文学も紹介します。「本物の読書家」(乗代雄介著 講談社)はタイトルに惹かれて読み始めましたが、どろりとした人間性のグロいところをさらりと描き、文学オタクと思われる著者の広範かつ深い知識が物語に厚みを与えており、しかも文体や構成はきちんと純文学の体裁になっている!、という才能におこがましくも嫉妬の気持ちを禁じ得ない作品です。勢いで「最高の任務」(同 講談社)も一気に読みましたが、印象は変わらず素晴らしい。残念ながら未読の「旅する練習」(同 講談社)は更に評判がいいので今から読むのを楽しみにしています。

才能と言えば、今週発表の芥川賞受賞が有力視されている「推し、燃ゆ」(宇佐見りん著 河出書房新社)は、アイドルを推すことでしか自分の実存を感じられず、推しの感覚を通じてしか世界を知覚できない高校生の女の子が、ある事件をきっかけに推しアイドルが偶像から人間になってしまう〈受肉〉の危機に直面しながらも、この世界と自分自身のつながりをぼんやりと掴みかけるまで、を描いた素晴らしい作品です。アイドル推し作品で純文学というのもなかなか面白い取り合わせなのですが、とにかく信じられないほど心に刺さる表現の連続で、特に推しについて語るブログの文章の鮮やかさは、今これを書いていて本当に悲しくさせられます。著者の才能を感じて頂きたい、本当にお薦めの作品です。

今週は20日に芥川賞、直木賞、書店員新井さん(最近ストリッパーになられました!)が選ぶ新井賞の発表、21日に本屋大賞ノミネート10作品の発表とイベント目白押しで久々に刺激的な一週間になりそうです。

 

投稿者: 金次郎

読書が趣味の50代会社員です。

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