金次郎、長らく積読であった話題作、「人新世の『資本論』」を遂に読了

いよいよ冬が本格化してきた感じですが、気温の低下もさることながら空気の乾燥がひどくなっていることにも非常に気が重い今日この頃です。なぜかと言いますと、ただでさえルーチンでやらねばならないことが多い日常生活に乾燥対応のケアが加わるためで本当に面倒臭い。ということで、読者の皆さんにとって、心の底からどうでもいいことだとは分かりつつも、あまりにも書くことが無いために、金次郎の身体のケアについて書かせていただきたいと思います。すみません。

先ず起きてから最初にやるのは当然洗顔です。その後化粧水、乳液、クリームとフルに塗り込むのですが、気分によって妻の化粧品の中から安価なものとそれなりに高価なものを選んで使わせていただきます。出社する際には今や当然の日常ではなくなった出勤への気持ちを高めるために更に高品質なものを妻の目を盗んでこっそり使う場合も有るのですが、ちなみにそれはノエビア化粧品の最高級ラインの商品でお値段はとても恐ろしくて口に出せません(苦笑)。これまたどうでもいい話ですが、匂いフェチな金次郎はその日の気分でメゾン・フランシス・クルジャンのアクアユニベルサリスかジェントルフルイディティゴールドのいずれかのフレグランスを選びます。前者は爽やか、後者は甘いバニラの香りでかなり気分が上がります。ただ、会社でそれをいい匂いと言ってくれたのが、同じく中年のおじさん同僚(通称ミッツ・マングローブさん)ただ一人というのが気にはなりますが。。。

そして、朝のルーチンの最難関は点眼薬3本の時間配分で、目薬を差した後は1分ほど目を閉じてじっとしていないといけないし、それぞれの点眼の間も少なくとも5分は空けねばならないことから、朝の時間の無い時にちょっとでもミスるとそれなりにリカバリーに時間を要するので本当に面倒です。夜は夜で、洗顔からクリームまでのプロセスは同様ですし、時々妻から毛穴が汚いとクレンジングやパックをさせられるケースも有りこれはかなり手間と時間を要します。更に頭皮のマッサージにヘアオイルの塗り込みと続いた上に、なんと夜は点眼薬が4本となり更に煩わしさが増し増しとなります(涙)。これに加えて冬になると乾燥のために二の腕の発疹とかかとのガサガサが発生するため、これまたノエビアのクリーム1(薬用SDローション)とクリーム2(薬用SDクリーム)を塗り込む必要が生じ、特に足はクリーム後素足でベタベタ歩けないので、クリーム1・2と靴下を持って家の中をうろうろせねばならず、自分は何をやっているのだろうという気分になります(苦笑)。ただ、このクリームは一体どんな謎成分が配合されているのだろうと疑念が湧くほどに効果てきめんで、ガビガビになったかかとや足の裏、親指の側面などが塗り始めてから数日で赤ちゃんのお肌のような状態に戻り、かなり達成感が有るのは事実です。仕事ではいつもルートコーズ(根本原因)を見極めて対処しなさいと指導している立場としては、本来は床暖房をやめて足の裏を乾燥させ過ぎない、ちゃんとした加湿器を購入して室内の湿度を適切に保つ、などの対応をすべきなんだろうと思いつつ行動に移せていない言行不一致のダメ人間です(涙)。

さて本の話です。ずっと積読となっておりました「人新世の『資本論』」(斎藤幸平著 集英社)を流行にやや遅れてようやく読了いたしました。欠乏や稀少を意図的に作り出すことを通じて本質的な〈使用価値〉と貨幣で評価される〈価値〉を乖離させ、あくなき資本増殖のメカニズムが富の偏在や環境破壊、地球温暖化さえ引き起こした資本主義のシステムを捨て去って、マルクスが晩年に資本論を乗り越え辿り着いた脱成長コミュニズムの世界に移行することで、気候変動という地球規模の課題を含む様々な問題を解決することができる、というなかなかにレフトかつぶっ飛んだ内容でした。そもそも世界中が躍起になっているSDGsを〈大衆のアヘン〉と断じる過激なフレーズから始まる本ということもあり、最初はちょっと面食らいましたが、読み進めると様々な経済思想に対する膨大な知識と最先端のマルクス研究の知見に裏打ちされた論理構成には隙が無くあっという間に納得させられてしまいそうな迫力が有りましたし、マルクスの遺した膨大な晩年の手書き原稿を分析して彼が到達したであろう至高の境地を解明するという試みにも大変敬服いたしました。ただ、とにかく資本主義からの脱却が中心命題となっていて、グリーン・ニューディール的な対応も資本主義の枠組み内の話でしかなく解決策とはなり得ないとあっさり切り捨てられており、「気候危機とグローバル・グリーンニューディール」(ノーム・チョムスキーほか著 那須里山舎)を購入したばかりの金次郎にとっては小さい理由で恐縮ですが容易に受け入れられる内容でないため、もう少し結論を出すのは保留にして色々なポスト資本主義論についての著作を読み込んで勉強してみようと感じました。最近はカーボンニュートラルが大流行で「カーボンニュートラルの経済学」(小林光著 日経BP)、「BCG カーボンニュートラル実践経営」(BCG著 日経BP)などを読んで勉強してみてはおりますが、気候変動を資本主義の産物と捉えてそれを超克することで危機を乗り越えようとする「人新世の~」の姿勢は、金次郎の足の裏のガサガサと比較して恐縮ですが、まさにルートコーズへのアプローチだなぁ、と思いました(苦笑)。

次は少し柔らかい本、でもないのですが、「アルテミスの涙」(下村敦史著 小学館)はLIS(Lock-in syndrome=閉じ込め症候群)という意識は有り視覚も聴覚も正常なのに全く身体を動かせないという、閉所恐怖症の金次郎には耐えられない症状の若い女性患者が入院中の病院でなんと妊娠してしまう、という衝撃的な展開で始まる社会派ミステリーです。いつも手の込んだ設定と巧みなミスディレクションで読者を楽しませてくれる下村先生ですが、今回は流石にちょっとシチュエーションが突飛過ぎるというかやや必然性の担保が疎かになっている印象で、描きたいテーマと思われる人間の意志や尊厳といったところまで読者の感情移入が届かない懸念有りと感じました。とは言え、結末の驚きもなかなかでしたし、常に新しいことにチャレンジする姿勢も素晴らしく、この奇想天外なお話を筋の通った物語にまとめる筆力と合わせて、やはり流石の実力派人気作家だなと感心いたしました。

「茗荷谷の猫」(木内昇著 文芸春秋)は江戸末期から戦後までの東京を舞台に市井の、でもちょっと変わった人々の人生を切り取った連作短編集です。時代が流れ、江戸が東京と名前を変えても、この場所を舞台に人々がそれぞれの思いを抱えて悩みながらも他人と関わりながら少しずつ何かを繋いできたことを、微妙に登場人物が重なる連作短編の構造を用いてしみじみと描いています。すっきりともしないし、ハピエンでもなく、寧ろ9編の作品全てが物悲しいのですが、何となく多数の人々の思いが濃密に交錯する東京という場所の活力を感じ、自分ももうひとふんばりと気合が入る読後感で不思議でした。勿論猫が好きなのでタイトルで選んだわけですが(笑)、そういう意味では期待は100%裏切られました。

先日芥川賞・直木賞候補作が発表となり、このブログで芥川賞に最も近い男と紹介した乗代先生がしっかりと候補入りされていて全然関係無いのにガッツポーズしておりました。頑張れ!

 


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投稿者: 金次郎

読書が趣味の50代会社員です。

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