仕事での研究が一段落し、「自由研究に向かない殺人」を読む

少し前にノミネート作品を紹介しましたが、今年の本屋大賞発表は4月6日(水)ということで、通算4度目となる金次郎と宿敵Mによる本屋大賞順位予想対決も徐々にテンションが上がって参りました。スケジュールの関係で今回の順位予想発表は直前の4月3日前後になると思いますが現在二連敗中の金次郎が勝てるよう応援宜しくお願いいたします。まさかこのブログを読んでいただいている方の中にM推しはいないと信じたいですが(笑)、ドイツくんだりからこの中年のお遊びに真面目に付き合ってくれている彼にもぜひ声援を送っていただければと思います。とは言え、去年負けた際に購入しておくべきだった景品の〈金の栞〉をまだ買っておらず、その間に金価格は上がるわ円安になるわで金次郎の懐はかなりまずいことになっており、今年は負けられません(苦笑)。ちなみにMはある競技で日本一になった経験が有るという触れ込みでスーパールーキーとして金次郎の会社に鳴り物入りで入社してきましたが、飲み会でその技を披露してもらったところ、???という雰囲気となり、しばしの静寂が訪れたことを記憶しております。こんな謎めいた彼についてもご本人の了解をもらいつつ、可能な範囲で紹介していきたいと思います(ネタ切れのためw)。

去年の終わりに少し書きましたが、妻がしばらく股関節の痛みと全身のしびれ症状に苦しんでおり、夫婦で辛い状況に耐えておりました。その際に、読者の皆さんをはじめたくさんの方から励ましやアドバイスを頂戴し、夫婦共々感謝しながら頑張ってきましたが、おかげさまで症状は最悪期を脱し、少しずつ活動の幅も広がって、美容院や歯医者といったちょっとしたチャレンジの予定もこなせるようになってきました。まだまだ回復途上ではありますが、二人で健康の有難みを噛み締めつつ油断せずに治療を続けようと思います。改めましてお気遣いいただいた皆さん、本当にありがとうございました。その妻の症状について書いたブログにドラマ「真犯人フラグ」が面白い、と紹介したのですが、先週末に最終回を迎え、二転三転するストーリー展開、意外な犯人と動機への納得感、伏線回収の満足度と何れを取ってもなかなかの秀作だったと思います。放映中に西島さん主演の映画「ドライブマイカー」が話題になり改めて彼の演技の幅広さに感心しながらじっくり観られて楽しめました。

さて本の紹介です。先ずはイギリスで大ヒットし、日本でも多数の海外ミステリーランキングで軒並み上位に入った話題作の「自由研究には向かない殺人」(ホリー・ジャクソン著 東京創元社)です。イギリスの小さな町に住む17歳の女子高生ピップが、5年前に発生した殺人事件の謎を、その事件の犯人とされ自殺してしまったサルの無実を証明すべくサルの弟ラヴィと共に自由研究(EPQ=Extended Project Qualification)の名を借りて捜査する、という青春ミステリーです。ケンブリッジ大学を志望しているピップの頭脳明晰さもさることながら、偏見を持つことなく物事を眺め、様々な圧力に負けずフェアな視点を持ち続ける彼女の真っ直ぐさが魅力的に描かれており、結構嫌な事もたくさん起こるにも関わらず非常に清々しい読後感となっています。何の捜査権限も持たない普通の女の子が自由研究目的と偽って、関係者へのインタビューなどの調査を進めたり、Social Media上の写真の検証から警察も気づけなかった真相に迫る展開には若干リアリティの欠如を感じぬわけではないですが、そこはご愛嬌ということで、寧ろピップの義父ビクターのユーモアやピップと友人たちとの女子高生らしいおバカなやり取りに笑いを誘われ気持ちを明るくさせられる点を評価したい作品です。有力容疑者がめまぐるしく入れ替わるスピード感も飽きさせませんし、謎解きの納得感も一定レベルだと思いますので、勿論ミステリーとしても充分及第点だと思います。しかし、高校生が車を乗り回したりパーティーしまくったりしてるのですが、イギリスってそんな感じなんでしょうか?もしかして日本も?

次は、「メタバースとは何か」(岡嶋裕史著 光文社)ですが、最近ニュースなどでしばしば目にするようになった話題のメタバースについて勉強しようと思い読んでみました。ゲームもやらない金次郎にはややとっつきにくい部分も多く、読後直ぐに再読して漸く朧気に全体感を掴むことができました。岡嶋先生の定義するメタバースは疑似現実よりは仮想現実に近く、自分の好きなものに囲まれ不都合なものを排除したもう一つの世界を意味し、究極的には食事と排泄以外はそちらの世界で過ごすことを目指すもの、ということのようです。自由が担保され、多様性の尊重が憲法となったポストモダンの社会において、人の数だけ正義が存在するぎすぎすした生活からの避難場所としてのSocial Media内でのフィルタリングバブルを一歩進めたものがメタバースという整理はなかなか分かり易かったです。また、Social Mediaとしての強みを活かしメタバース的仮想現実での成長を目指すFacebook改めMETAはスマートグラスでなくより没入感の有るHMD(Head Mount Display)に賭けている一方で、リアルに強いappleやMicrosoftはミラーワールド的疑似現実を志向し現実とデジタルを重ねるスマートグラスを戦略の中心に据える、などGAFAMの方向性が解説されていて非常に興味深く読めました。しかし、この岡嶋先生はかなりのゲームおたくのようで、死んだらメタバースに埋葬されたいとコメントしているユニークな方なのですが、自分のことをさんざん老人と言っていて、いったい何歳かと思い著者紹介を見ると、なんと金次郎とタメでした。。。老人。。。

本屋大賞ノミネート作品全部読むプロジェクトも地味に進めており、2004年度7位の「デッドエンドの思い出」(よしもとばなな著 文藝春秋)を読んでみました。現在は漢字になっている吉本先生の作品はなんと初読でしたが、ここに収められた5作の短編はどれも軽やかな文章の中に心の奥の自分でも意識していない触れるとちょっと苦しくなるどうしてもコントロールしきれない感情のほの暗い部分をあぶり出されるような、切ないけれど不思議と前を向ける今までにない読後感の作品でした。金次郎の尊敬してやまない故さくらももこ先生と吉本先生は仲良しだったようですが、文章から同じ匂いを感じるのは気のせいではないと思います。

仕事では重めのタスクが一段落し、まだ気は抜けませんが少し読書に時間を割けそうです。

 


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投稿者: 金次郎

読書が趣味の50代会社員です。

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