金次郎、未体験指圧の激痛にあわや落涙

最近は歳のせいか首、肩のこりがひどく、それが頭痛につながることもしばしばで、何か良い対処法は無いものかと常々考えておりました。そんな折にたまたま付き添っていましたので妻の股関節痛でお世話になっている整体の先生に相談したところ快く治療を引き受けて下さいました。初回の施術は割と一般的な骨盤の歪み調整などで身体のバランスを整える感じで終始し、それはそれで全身がリラックスできて良かったのですが、首や肩の頑固なこりは改善せず、やはり歳には勝てぬのかとなかば諦めかけておりました。ところがそこで先生から、一度治療をした感触と身体の反応から金次郎の治療ポイントがクリアになり、非常に痛いが効果が見込める治療を試すのが良かろうとの提案をいただきました。金次郎は学生時代に運動をやっていたこともあり、様々なマッサージや鍼灸の治療を受けた経験はそれなりに多く、施術時の痛みや心地よさの感覚はある程度持っております。なかでも亀戸の先生の骨がバラバラになりそうなこれでもかという激痛の指圧や、シンガポールの通称〈指圧の魔術師〉ソー先生による気体の収縮を利用して背中の肉をカップに吸い取るカッピング治療の痛みはかなりのものでした。さらにソー先生の上級テクであるそのカップを背中の上で縦横無尽に動かす拷問的な手技を経験している金次郎ですので、何とか耐えられるだろうと痛みに激弱な性格上きっちりビビリはしたものの、心を決めて治療を受けることといたしました。

一体どんな治療が始まるのかと全身を硬直させて待つこと数分、先生は指に滅菌サックを装着し、これから口の中のマッサージをします、と軽やかに宣言されました。その後に起きる状況が全くイメージできず呆然としながら言われるがままに口を開けると、先生が頬骨、ほっぺた、下歯茎の部分を口の内側から外側に向けて思い切り押し始めるではないですか。横で見ていた妻が、ほっぺたから先生の指の形が分かる、という程ぐいぐい押されたことに伴う痛みは全く未体験のこれまでとは種類の違うもので、少しでも気を緩めると涙がこぼれ落ちてしまいそうで、何とか恥ずかしいことにならぬよう必死でこらえねばならない恐るべき体験でした。これでもまだマックスの三分の一ですよと施術後に言われて先が思いやられましたが、気づけばなんと首、肩から頭皮まで相当リラックスしたゆるゆるの状態になっており、かなりこり症状が改善する驚きの効果で、確かに体の内側と外側の両方から治療ポイントにアプローチできるのは口の中だけであり、これはもう少し耐えてみようと前向きな気分になりました。またどこかで経過をご報告させていただきます。

まだまだ続いている本屋大賞ノミネート作品全部読みプロジェクトですが、2005年度第2位の「明日の記憶」(荻原浩著 光文社)を読みました。金次郎と同年代の広告代理店部長が突然若年性アルツハイマーと診断され、記憶と共にこれまで人生で積み上げてきたこと、つまりは正に自分の存在そのものを失ってしまうのではないかという恐怖と対峙し苦悩する日々が描かれる、なかなかに怖い作品でした。この本を読みながら、リトアニアの水泳金メダリストが染料で血の色になった池で泳ぎロシアのウクライナ侵攻に抗議するというニュースを見て、あれ?あの日本女子の平泳ぎ金メダリストの名前何だっけ?と思い出せなくなっていることに恐怖しました。これは絶対にネットに頼らず自力で思い出さねばならないと心に決め周辺記憶から辿り、体操の池谷兄弟などの無駄な記憶を呼び覚ましながら、何とか岩崎恭子さんを引っ張り出し少し安堵いたしました(苦笑)。この本の主題としては、病魔によって記憶が失われたとしても、自己を規定している心の核のようなものは決して奪い去られることはない、というようなポジティブなものとエンディングから解釈しましたが、50歳の大台を前にぞわりと考えさせられる内容でした。記憶を引っ張り出す作業の中で(このブログを書く際もカラカラになるまで記憶をあさっていますが)、小学生時代に珍しく母親に買い与えられた本のことをふと思い出しました。それは、「無限への一歩」(志賀浩二著 岩波書店)という本で、微積分の概念を子供向けに分かり易い例を示しながら解説している内容と朧気に記憶しており、当時小学生だった金次郎には当然理解できなかったのですが、分からないなりに何度も読み返したりして、思い返してみるとこの本が金次郎の知的好奇心を感じるきっかけだったなぁと本との出会いの大切さを改めて考えてみたりいたしました。

そうやって少しずつ育んだ知的好奇心が無ければ絶対手に取らなさそうな本ですが、「B.C.1177 古代グローバル文明の崩壊」(エリック・H・クライン著 筑摩書房)では、今から3000年以上も前に東地中海を中心とした地域で古代グローバル社会と呼び得る密接に関係した交易ネットワークが構築されていたことが紹介されており、そのシステムの崩壊を象徴する謎の集団〈海の民〉とエジプト王ラムセス3世との闘いに至る様々な歴史的要素が解説されていて、世界史の勉強では考えたことの無かった視点で非常に新鮮でした。当時は後期青銅器時代と時代区分されるようですが、エジプト、ヒッタイト、ミケネイ、アッシリアなどの地域帝国間で文書や物品が頻繁にやり取りされていたり、青銅器を製造する上で不可欠なスズ鉱石が現在の石油のようなコモディティとして地政学上のパワーバランスに影響を与えていたりとまさに冷戦崩壊後のグローバリズムが象徴するちょっと前までの現代世界の姿と重なる部分が多く非常に興味深い内容でした。

またその繋がりの複雑さ故に気候変動など様々な小さなシステムの破綻が連鎖しカオス的な崩壊を招いたという研究成果は、現代とのアナロジーという意味でぞっとする内容ではあるものの大変示唆的であり、学ぶべきところが多いと思いました。この本の中で紹介されていた「古代文明と気候大変動 人類の運命を変えた二万年史」(フェイガン・ブライアン著 河出書房新社)は人類の築いてきた文明が気候変動にどう影響を受けてきたかについて解説している内容で、やかましく温暖化云々には言及せず、移動生活から定住生活へと移行した人類の気候変動への脆弱性を古代文明の例を挙げながら淡々と説明しているのが逆に迫力大でした。

かなりどうでもいい話ですが、在宅勤務の昼休みに眺めるフジテレビのバイキングMOREの後番組であるポップUP!が有り得ないほどつまらず、どうしてこれで企画会議をパスしたのかと不思議でなりません。自分の仕事も煮詰まった結果そういう変なことにならぬよう注意せねばと教訓にします(笑)。

 


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投稿者: 金次郎

読書が趣味の50代会社員です。

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