金次郎、人間ドックのサービス低下の理由を考える

今週、年に一度の人間ドックをドックの聖地であるS病院の検診センターで例年通り受診したのですが、何となく今年はオペレーションの水準がいつもの水も漏らさぬというか、軍隊的なというか、さすが高額という感じのプロフェッショナルなものから若干レベルダウンしているのではないかと少しだけ気になりました。これまでは、受付や誘導を担当されている事務方のスタッフも、検査を担当される検査技師の方も基本的には非常にスピーディーで感じの良い対応をしてくださっていたのですが、今年は全体的に不慣れな雰囲気、やや怖い感じ、こちらのちょっとしたリクエストに対しての対応が不親切という印象で、運営方針に大きな変化が有ったのではないかと懸念される内容でした。最初の説明を担当された看護師さんに何か気になるところは無いですか、と聞かれたので、左肩が五十肩で検査中に痛みが出てしまうと検査に支障をきたす恐れありと申告したところ、「では、左の五十肩とシステムに登録しておきます」と淡々と言われ、もう少し専門的な表現で対応してくれればいいのにと適当に扱われた感満載の出だしとなりました(涙)。身体測定担当のおばさまはかなり強面の方で腹囲測定のメジャーを引っ張る力もイメージ通り剛腕で、おかげ様でお腹が圧縮されて結果腹囲が2センチ改善しました(笑)。腹部超音波検査担当のお兄さんは全般的に計測器具の押し付け圧が強すぎて、検査というより加圧筋トレみたいになってしまい、ノー配慮で左肩は激痛な上に、ゼリーの扱いが雑でお腹も背中もベトベトになり極めて不快だった挙句の果てに下腹に最初に挟んだティッシュも始末してくれない不親切さで、次のレントゲンのところで慌ててティッシュを捨てるはめになるという、どうなのというか悲しい感じでした。最後の胃カメラの先生も当然ながら登録済みの〈左の五十肩〉には目もくれずで、腰痛などの痛みで胃カメラ時の麻酔から目覚めてしまう場合が結構有りますが我慢していただくしかない、の一点張りと非常に機械的な感じで、仕方が無いのだとは思いますが、麻酔鎮静剤に5500円も支払わせるからには表面上だけでも親切にしてもらえれば少しは納得感が有ったのにと残念に思いました。とりあえずそんなサービス低下の背景として思いつくのは、①別の検診センター立ち上げのために優秀なスタッフがそっちに回っている、②諸々のコストアップ圧力の中採算を維持するためにシフトを減らして人件費を抑えたことで一人一人の負担が増え、それがモチベーション低下につながっている、③パワハラにうるさいご時世の中これまで軍隊のように厳格であった指導体制が揺らぎオペレーションの緩みを招いている、ぐらいでしょうか。無責任コメント失礼しました(苦笑)。まぁそんなこんなの人間ドックでしたが、おばさまの激しい締め付けによる腹囲改善以外はだいたい例年通りの結果で先ずは一安心で良しといたします。ただ、毎年ドック後にご褒美として食べるアンジェリーナのモンブランを買おうと日本橋三越に行ったところ、なんと売り切れ!そんな状況これまでほぼ見たことが無いと思い検索してみると、かのきゃりーぱみゅぱみゅ先生が数日前のテレビ番組で三大ご褒美食の一つとして紹介されたようで、そのせいで本日12時時点で早くも完売していた模様です。歴史と伝統の有るアンジェリーナのモンブランが最近そんなにメディアにも出ていなさそうなきゃりー先生の一言で急に売れるなんて、ちょっと納得いかない複雑な気分でした。

本の紹介に参ります。「夜の道標」(芦沢央著 中央公論新社)は金次郎のお気に入りである芦沢先生による長編ミステリーです。誰からも好かれ信頼されていた塾経営者が殺された事件の動機や全く足取りが掴めない容疑者の行方の謎を中心に、ミニバスケのチームメイトである二人の小学生、パート女性、窓際の刑事それぞれの視点から物語が紡がれ思いもよらない展開へと進んでいきます。主要登場人物の一人が全く空気を読めず忖度もできないキャラなのですが、彼の邪心の無いストレートな言動にはっと気づかされることが多いという事実に考えさせられる一冊でした。非常に重いテーマが謎の根本の部分に据えられており、そちらに目を奪われる余り何故被害者は死なねばならなかったのかの本質が実は理解しきれていない恐れも有るのでもう一度じっくり読まねばと思っております。

直木賞候補作となった「爆弾」(呉勝浩著 講談社)では、自らスズキタゴサクといういかにも怪しげな名を名乗る微罪で連行されたキモいおっさんが、ただの酔っ払いかと思いきや、秋葉原での爆破事件を予言して一転第一級容疑者に昇格し、更なる事件を防ぐべく尋問を続ける取調官とタゴサクとの非常に不愉快な心理戦が続いていくというちょっと異質のミステリーとなっています。とにかく悪意の塊で失う物の無い、所謂〈無敵の人〉であるタゴサクが本当にムカつくのですが、登場人物のみならず本作を読んでいる読者の我々も、そんなタゴサクの言動の中に自分の心の内に潜む醜さと、正義と呼ばれているものの限界を見出して戦慄を覚えることになります。第一部は導入部分でちょっとだるいですが、第二部、第三部と怒涛の勢いで物語が展開し加速度的に面白さが増しますので何とか辛抱して第二部まで読み進めていただくことをお薦めいたします。

「ハウス・オブ・グッチ」(サラ・ゲイ・フォーデン著 早川書房 )は20年程前に出た単行本が今回GUCCI創業100周年を記念した映画の原作となったことで上下巻に分冊され文庫化されました。映画の主役はレディ・ガガ演じるマウリツィオ・グッチの悪妻パトリツィアで、どうしても3代目マウリツィオ暗殺事件のインパクトが印象に残りがちですが、初代グッチオ・グッチがフィレンツェの零細皮革加工業として創業した後の日米を含むグローバル市場へのブランド展開やファッション産業への事業拡張、どん底からの経営再建やPPR(現ケリガングループ)とLVMHを巻き込んだ買収合戦など、経済ノンフィクション小説としても充分に面白く学びの有る作品だと思いました。特にお家騒動のごたごたからグッチを立て直したドメニコ・デソーレとトム・フォードのトム&ドムと呼ばれた名コンビの活躍にはなかなか見るべきところが多いです。ドメニコは一介の弁護士でしたが、グッチ・アメリカの法律顧問という立場を経てその後不遇をかこつも、最終的には本社のCEOにのし上がった経営手腕とグッチ一族に翻弄されたその数奇なサクセスストーリーは大変印象的でした。一方、絶頂期にセレブがこぞって上から下までグッチを着ていた時代を演出し、その後イブ・サンローランのクリエイティブ・ディレクターにも上り詰め、現在も世界有数のデザイナーであり続けている天才トムの才能の一端を感じることも非常に刺激的だと感じました。残念ながら金次郎にGUCCIは着こなせませんが(苦笑)。

会社の前でタクシーの列に並んでいたらすぐ前に並んでいた他本部の知り合いから、金次郎さん昨日S病院検診センターにいましたよね?と聞かれ、ゼリーがベタベタに付着したティッシュをぷらぷらさせながら歩いていた姿を見られたか、と悲しい気分となりました。ドックの場所変えようかな(涙)。


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投稿者: 金次郎

読書が趣味の50代会社員です。

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