古くて新しい農業について、先ずは歴史を学んでみることに

最近、農業関連の仕事が増えていて、当たり前なのですがこの領域の歴史の古さと幅の広さ、それに対する自分の知識不足、というかほぼゼロ、に悩む毎日です。千里の道で済むかどうかも分かりませんが、とりあえず一歩からということで手当たり次第に農業関連本を読んでみることにしました。

「世界からバナナがなくなるまえに:食糧危機に立ち向かう科学者たち」(ログ・ダン著 青土社)は、人類が直面している食糧危機の本質は何か、生物多様性がなぜ重要なのか、これまで科学者たちが農産物の病気や害虫への対応にどのように取り組んできたか、そして時には命懸けとなった遺伝子源保存へのロシア科学者の執念、と初心者の私にはいきなりやや重ための内容ではあったものの、ゲノム編集直前までの農業課題をめぐる追いかけっこを俯瞰できる大変参考になる本でした。

農業テロでブラジルのカカオ産業が消滅した事例にはとても衝撃を受けましたが、現代のモノカルチャー農産品にも同様なじゃがいも飢饉的現象がいつ起きてもおかしくないという現状を知り、無力な私はとりあえずバナナを食べました。

「食糧の帝国:食物が決定づけた文明の勃興と崩壊」(エヴァン・D・G・フレイザー/アンドリュー・イマス著 太田出版)ではメソポタミア、ローマ帝国、キリスト教修道院で如何にして農業が始まり生態系に影響を与えてきたか、農業が内包する支配/被支配の関係や帝国主義的搾取の構造等にふれながら、原題農業の持続可能性について警鐘を鳴らす内容になっています。

フランチェスコ・カルレッティという16世紀末~17世紀のフィレンツエ商人が著した「世界周遊記」の記載に関連付けながら語られる食糧交易史は全編非常に面白かったです。この本が出てから10年経っていませんが、テクノロジーの進歩もあり状況がだいぶ改善した分野が有る一方で、水資源確保のような依然手付かずの根本課題も残っており、確かに海外の農家さんから水不足で困っているという話を聞いたな、と思い出して危機を実感します。

「日本を救う未来の農業 イスラエルに学ぶICT農法」(竹下正哲著 ちくま新書)は少し視点を変えて、日本農業が抱える問題に焦点を当て、最新のスマート農業である灌漑技術を活用する等生産性の改善により着目することで、世界最高レベル(!)の補助金にこれ以上依存せず、国際競争力を担保してTPP以降の大競争時代を乗り切ろう、という内容です。

しかし、政治家が集票のために農業セクターの合理化を妨げ、農水省が補助金予算確保のために非効率を温存する、という奔放農業の現実には我が目を疑う思いです。

投稿者: 金次郎

読書が趣味の50代会社員です。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA