金次郎、「ザ・ブルーハーツ ドブネズミの伝説」を読んで青春時代を懐古する

先日TBSの長寿番組であるCDTVサタデー(旧Count Down TV)が3月末で終了するという悲しい事実を知りました。番組開始当初から観続けてきた思い入れもさることながら、中年の金次郎夫妻にとってこのめまぐるしい音楽シーンにどうにかついていくために非常に程よいまとまり具合の情報ソースだったので、後継のCDTVライブ!ライブ!は存続するとはいえちょっと困ったなという感じです。ただ、音楽のマーケティングが形を変えたからなのか、コロナ禍だからなのかよく分からないものの、30位以内に長期間入り続ける曲がとても多くランキングが余り動かない週も結構有って、多様化の時代にランキングものはその役割を終えたのかもな、とも思ったりしました。しかし、何はともあれ、そろそろ新しい曲を覚えてカラオケにでも行きたい!

音楽つながりということで。「ザ・ブルーハーツ ドブネズミの伝説」(陣野俊史著 河出書房新社)はザ・ブルーハーツの歌詞の世界を、この伝説のバンドが活動した10年を振り返りながら、なんとか解釈しようと試みた著者の素晴らしい挑戦の書です。

金次郎にとって、1985年から1995年のブルハ(略称はこれでいいのか?)活動期間は中学入学から大学卒業までの時期で、まさに青春時代そのものであり、常にこのバンドの音楽が身近にあったわけですが、この本を読み改めて自分が曲の中身をよく理解していなかったこと、そして中身が分かっていないにもかかわらず金次郎の〈心のずっと奥のほう〉(「情熱の薔薇」より)に届いたこのバンドの曲の力を再認識しました。高校の文化祭で友人のバンドが演奏するブルハの曲に合わせて何度も何度も絶叫したのが懐かしく思い出されます。「リンダリンダ」、「人にやさしく」、「終わらない歌」、「NO NO NO」などなどなど。

感覚派で天才肌のヒロトが際立つパンチラインで突き付けてくる世界の不条理や孤独と、意外にも文学青年で理論派のマーシーがポエジーで紡ぎ出す物語の調和が何とも言えぬバンドの奥行きを生み出していたとの解説で、確かにヒロトの「少年の詩」やマーシーの「青空」など言われてみるとそういう感じがします。改めて「少年の詩」の〈そしてナイフを持って立ってた〉は異才を放っていると感じますね。

世の中をぶち壊してやる的なパンクロックではなく、反戦とか反核のように社会について歌うわけでもなく、何も押し付けず、誰も差別せず、神も崇めず政治も語らずに、ひたすらにフラットで優しいドブネズミの視点からどこかの誰かの気持ちに寄り添って叫んでいたんだなと思うと、なかなかに感慨深いです。ぜひ、この本の中でたくさん引用されている名曲の歌詞を味わって、そのあたりを感じていただければと思います。ただ、歌詞だけでは満足できず、曲をYouTubeで聴き始めてしまうとあっという間に時間がどんどん経ってしまい本当にまずいことになりますのでご注意下さい(笑)。まだまだ読まねばならない本がたくさん有るけど、しばらくはザ・ブルーハーツを聞いていたい気分です。

蛇足ですが、金次郎が父親の転勤で岡山市に住んでいた頃ヒロトは岡山市にいて、ザ・ブルーハーツとリンダリンダが誕生した伝説のバドミントンシャトル廃工場が金次郎が上京して直ぐに住んでいた笹塚に有ったというのは、全く関係無いですがちょっと嬉しかったです。

さて、今回も「闇の自己啓発」の課題図書2冊を紹介します。先ずは課題図書③の「明日、機械がヒトになる ルポ最新科学」(海猫沢メロン著 講談社)です。この本はテクノロジーの進歩に伴って、人間の機械化、機械の人間化が急速に進んでいるのではないかとの問題意識から、ロボットやAIを含めた最新技術について著名な7人の科学者に取材し、その結果についてまとめた非常に真面目な本です。

映画マトリックスの世界のように現実と虚構の区別がつかなくなる代替現実(SR)システムや、3Dプリンターで3Dプリンターを作ろうとする自己複製すなわち機械の生物化の研究について、電気刺激によって失われた身体感覚を取り戻す研究からデータ分析による〈幸福〉になるシステムの解明まで様々な最先端技術の取材を通じ、著者は、機械が人間の似姿として作られたということ以上の、人間と機械の類似性に思い至ります。

そして、意識や心の起源、実存について、幸福の追求という観点での宗教と科学の比較、などの哲学的な問いを繰り返す中で、人間と機械の間に境界線を引くことに疑問を感じるようになり、人間と機械が競合しつつ幸福になるために進化し続ける未来を示唆して締めくくられる、というなんとも考えさせられる内容になっています。宗教的な悟りの状態をテクノロジーで再現できる、というのは驚きでした。

そこから、課題図書④の「銀河帝国は必要か?」(稲葉振一郎著 筑摩書房)で地続きのテーマとして、人間とロボットが共存する世界で起こり得る様々な問題について、アイザック・アシモフの「ファウンデーション」シリーズを題材に論じられます。

フィクションとはいえSF小説は、オカルト的なものや超人を扱ったものと違い、物理法則に準拠して描かれているため人類の未来について考える上で参考になり得るとか、人間が宇宙開発のツールとして精巧なロボットを作り出す確率が異星人と遭遇する確率より高いことが定説となる中で、異星人もののSFが減りロボットによる宇宙開発ものが増えている、というのは金次郎にとって新たな視点で興味深いところでした。

アシモフも読んでないですし、中身も難解で一読しただけでは理解が追い付かない部分も多いですが、〈ロボット三原則〉といういわば憲法の縛りの中で、自らの存在意義に悩み、歴史と向き合ってより良い未来を希求するロボットの姿は、そういう物語だから、という枠を超えた人間らしさが有り、ロボットに〈倫理〉を感じるという点では、課題図書③と同様の結論になるのかな、と思います。ただ、もう少し深く理解したい気持ちも有り「闇の自己啓発」を読み、そこでの議論を参考にしつつ、アシモフも読んだ上で改めてこの本に挑戦してみたいと思います。先は非常に長いです(苦笑)。

「アルスラーン戦記」全16巻中10巻まできました。こちらもブルハ同様気づくと没頭してしまっていて頭の痛いところです。

 

 

投稿者: 金次郎

読書が趣味の50代会社員です。

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