金次郎、COPについての恥ずかしい無知をあえて告白

非常に恥ずかしいことを告白しますが、世の中の流れで徐々に仕事での環境関連の会話が増えてきているにも関わらず、金次郎はこともあろうに正式名称を知らぬまま流行に呑まれCOPという略語を思考停止で使い続けておりました。グラスゴーでのCOP26は期待外れの内容で終わってしまいましたが、このままではいけないと日本語では気候変動枠組み条約締約国会議となるCOPが何の略なのかうんうん唸って考えてみました。当然気候が入っているので最初のCはClimateではないかと考えるもOPがどうにも分かりません。Oceanかな、Planetかな、などとモスバーガー的なイメージをしてみるもしっくりこず、OはともかくPは排出〈禁止〉でProhibition?、二酸化炭素が〈充満〉するからPervasion?、〈周期〉的に会議するからPeriod?とか無知なりに悩んでみたものの、結局力尽きあえ無く考えるのを断念してググることに。すると驚いたことに、なんと正解はConference Of the Parties!え?!ちょっと待ってよ、気候も変動も枠組みも条約も入ってないじゃないですか!あまりにも一般的かつシンプルな表現にかなり肩透かしな気分となりましたが、普通に辞書的に訳すと目的や行動を共にする団体の会議、ということで、そんなことなら結構様々な会議が全部COPとなってしまうのでは。。。町内会の集まりもCOP、部活の会議もCOP(笑)。どうやら、ある条約を批准した当事者(国)が参加する会議を一般的にCOPと呼ぶようで、例えば生物多様性条約締約国会議もCOP+回数で記載するのが慣わしだそうです。でも、このthe Partiesを締約国とは到底訳す自信は無く、英語って難しいなとつくづく思いました。ちなみに金融界でCOPというとコロンビアペソのことになります(笑)。

他にも、ATMがAutomated Teller Machine、USBがUniversal Serial Bus(busがそもそもomnibusの略)、PDFがPortable Document Format、MOTHERSがMarket Of The High-growth and EmeRging Stocks(かなりこじつけ)、LaserがLight Amplification by stimulated Emission of Radiationなど結構正式名称を知らない略語が多いなと反省です。こちらは日本語の略語ですが、食パンは主食用パン、教科書は教科用図書、経済は経世済民、合コンは合同コンパでそのコンパはcompany(交際)が縮まったものなど結構無意識に使っているものがかなり略されていて驚きます。確かにパンは基本食べるのでよく考えるとわざわざ〈食〉を前に付けるのは変ですね。また、ピアノはクラヴィチェンバロ・コル・ピアノ・エ・フォルテ(強い音や弱い音を出せるチェンバロ)の略とのことで、え?ピアノってチェンバロなの??、とかなり困惑いたしました。まだまだ知らないこと多数で道のりは険しい。

今回もばらばらと本の紹介をいたします。先ずは「英米文学者と読む『約束のネバーランド』」(戸田慧著 集英社)です。金次郎はテレビアニメでしか観ていないのですが、白井カイウ先生原作の超人気ダークファンタジー漫画である「約ネバ」の文学者視点での勝手な読み解き本でうんちくがふんだんに詰まっておりなかなか楽しめました。特に金次郎はアニメ版第2期の有り得ない拙劣編集に超人気漫画がこんな中途半端な展開になるはずが無いと憤っておりましたので、ネタバレを大量に含む本書を読み、改めて「約ネバ」の素晴らしさを漫画版に触れることなくではありますが、大いに堪能できて満足いたしました。

もの凄くいい加減に「約ネバ」のストーリーをまとめますと、人間の子供が鬼の食用として育てられているという世界で、そんな悲惨な社会構造に勇気を持って立ち向かう主人公グループの奮闘ぶりを通じて〈あきらめない気持ち〉の尊さを描くお話ということになるかと思います。(ファンの方、間違っていたらすみません。)なかなかの過激設定ではありますが、勿論著者も神ではないので、ゼロから世界を創造し奇想天外なストーリーを組み上げるのは相当に難易度が高く、ある程度は他の様々な作品同様に歴史的な下敷きや元ネタとなる何らかの先行作品から設定を借りてくることになり、この読み解き本ではそのあたりの関係性が丁寧に解説されていて作品理解が深まりました。例えばピーターパンと宿敵フック船長(ジェームズ・フック)と作中のピーター・ラートリー、ジェームズ・ラートリー兄弟との逆説的アナロジー、放浪の鬼であるソンジュとムジカの原初ユダヤ信仰及びキリスト教との重なりは借りてきた設定が物語に深みを与えていますし、ルイス・キャロルの「不思議の国のアリス」や「鏡の国のアリス」の影響も色濃く見られ、特にエマとアリスの反逆という点における共通性は確かに興味深いと思いました。ちなみに金次郎は恥ずかしながら初めてルイス・キャロルが男性であったと知りました。どういう理由か名字であるにもかかわらず、キャロルという響きに完全に惑わされてしまっておりました(苦笑)。

また、女性は母親として生きる選択肢のみが提示されるという伝統的価値観や、少年ジャンプには珍しい女性主人公であるエマに象徴されるジェンダーステレオタイプの徹底的な否定など、著者の信じるリベラルな世界への強いメッセージが詰まっているとの解説にはなるほどと思わされました。作品のネタ元を想像する楽しみ方を身に着けるヒントにもなりますし、「約ネバ」好きの方もそうでない方も試してみると気づきの有る一冊ではないかと思います。

「Disruptor 金融の破壊者」(江上剛著 光文社)では、コロナ禍により疲弊する経済、危機に乗じて国民をミスリードすることを通じ権力基盤の強化を図る世襲政治家たち、SNSの想像を越えた伝播力が引き起こす金融危機という大惨事の懸念、などなど一歩間違えば直ぐにでも現実になりそうで恐ろしい近未来予測をリアリティをもって描いた経済フィクション小説です。名前は変えてありますが、実在の人物がモデルと一発で分かるリアル過ぎる設定に、読みながらこんなこと書いて大丈夫なのかなと他人事ですが不安になりました(笑)。冒頭で某地方銀行の取り付け騒ぎが描かれますが、金次郎の父親も地銀勤務でしたので、バブルが弾けた当時はさぞ大変だったのだろうな、と今更ながら思い返し、ずっと明るく振る舞っていた父の胆力に身内ながらすごいなと感心いたしました。金次郎はまだまだ未熟者です。

「黒牢城」(米澤穂信著 KADOKAWA)は織田信長の重臣であった荒木村重が突然謀反し、摂津有岡城に籠城したとの史実を舞台として設定し、籠城中に起こった様々な事件を、同城にて囚われの身となっていた黒田官兵衛が地下牢の中からボロボロの状態で解き明かすという歴史連作短編ミステリーです。最初から戦国時代随一の知将という官兵衛のイメージにかなり飲まれているため、決して愚鈍ではなく寧ろ名将と評価される村重をリモートながら深謀遠慮の言動で巧みに操る官兵衛の頭脳の冴えに普通の名探偵もののミステリーを読む際の10倍ぐらい恐れ入ってしまい、完全に著者の術中にはまってしまいました(笑)。

後半の伏線回収は過不足無しですし、どんでん返しの驚きもまずまずな上に、史実の文脈に謎とそれに関連する人々の思惑が物語の展開とぴたりと整合していて流石米澤先生、上手いなと感心いたしました。

金次郎の周囲の先輩方には毎週木曜TBSのプレバト俳句コーナーの熱烈なファンが多く思いを共有できて楽しいのですが、今週は歌広場淳氏の不祥事に起因する活動自粛により非常に不自然な編集が入っており微妙な気分で視聴いたしました。

 


読書日記ランキング

投稿者: 金次郎

読書が趣味の50代会社員です。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA