金次郎、ホームレス女子大生のサバイバル力に感服する

英会話のレッスンでネイティブスピーカーの講師を予約しようとすると、アメリカ人、イギリス人、南アフリカ人、カナダ人、アイルランド人、オーストラリア人等の中から良さそうな人を見繕って選択することになります。それぞれのお国柄になかなか特徴が有って面白いので紹介しますね。アメリカ人の場合に特徴的なのはイギリス人と比較してアメリカ国内にいながらオンラインで英会話の講師をしている人が多いことでしょうか。海外に行ったことは無いのかと聞くと、ややムキになってアメリカ国内でたくさん移動していると主張してくる人が多いのが印象的です。結構な確率で50州のうち10州とか14州とかに居住経験有りときちんと数えて覚えているのが日本人の感覚と違って面白いと思います。一方、最大都市ニューヨークに行ったことが無いという人もそれなりにいて、確かに日本の地方都市から東京に遊びに行くよりは距離的にも文化的にもハードル高そうな気がします。また、メキシコ、パナマ、コスタリカ等の中米の国にキリスト教関連のボランティア活動をするために住んでいる人もかなり多いですね。英語が難しくなるのと揉め事が嫌なので(笑)あまり突っ込んでキリスト教のどの辺の宗派なのかは聞かないようにしていますが、カルトとはいかないまでもややマイナーな宗派に属している人が多いような雰囲気がそこはかとなく漂っている気がします。

イギリス人の場合は大きく3グループに分かれるのですが、先ずはそれ程多くない国内組で極端に若いかお年寄りという二極分化の傾向が見られます。次のグループがスペイン(あるいはポルトガル)移住組です。このグループの人が口を揃えて言うのは、とにかくイギリスの気候には耐えられない、それに比べてここスペインの気候は最高だ!という主張で避寒に重きを置いているようです。相当田舎と思われるスペインの真ん中へんで太陽光発電、自分の農園+家畜飼育で意識高くプラスチックも使わずに自給自足生活をしている人がかなりの数いて驚きます。気候自慢とエコ自慢はお約束ですが、お子さんの教育にはやや苦労されている雰囲気でオンライン授業への依存度が高いようです。最後のグループは、以前このブログでも少し触れましたがさすらいの西洋人としてアジアに流れ着いている人々になります。このグループは、フィリピン、タイ、カンボジア、インドネシア(とりわけバリ)に住んでいる人が多く、基本的に都市部ではなくかなり田舎の農村部に住まれているパターンが散見されます。奥さんが現地の方の中高年男性という安定の型と、スキューバーダイビングのインストラクターをやっていたがコロナで仕事が無くなったという青年層(こちらは男女問わず)が多いですが、中には手広く事業をやっているという方もぼちぼちおられます。変わり種としては、自称多くの多国籍企業からアドバイスを求められていると自慢する人、世界を支配している秘密結社の陰謀から逃れるために敢て山奥に住んでいると真面目に語る人など突っ込みどころ満載の人も結構いて興味は尽きません。さすらっていることからもお分かりの通り基本的に非エリートの低所得層の人が多く、概して現在の保守党政権とりわけボリス・ジョンソン首相の批判をさせると金次郎が英会話の練習をする暇も無いぐらいしゃべりまくられるケースが有るので極力政治の話題には触れないようにしています(笑)。

南アフリカの方は殆どが自国から仕事をされている場合が多く、ヨハネスブルグよりも観光とワインが有名な港町ケープタウン在住の方が多い印象です。英語がネイティブっぽくないのと、電力供給が不安定でネットが時々切れるのであまり選ばないようにはしております。ほぼ全ての人が南ア政府は腐敗していてどうしようも無い、という諦念スタンスなので本当にそうなのだろうな、と思いつつ、ちょっと頼りないけど日本の政治はまだマシなのかなと感じたりもする今日この頃です。

非常に前置きが長くなってしまいましたが遅ればせながら本の紹介です。先ずは「ホームレス女子大生川を下る INミシシッピ川」(佐藤ジョアナ玲子著 報知新聞社)です。この本は母親をガンで亡くした日比ミックスの著者が日本を飛び出しアメリカで貧乏学生をしていたものの、お金が無くなって賃貸していた家を追い出される事態となり、ままならない境遇にブチ切れて突然ボロボロのカヤックでネブラスカ州からメキシコ湾までミシシッピ川を3000キロ下るサバイバルの旅に乗り出すというかなり奇想天外な旅のルポルタージュとなっています。セントルイスでミズーリ川からミシシッピ川に合流し、その後メンフィスやバトンルージュ、ニューオリンズといった金次郎の仕事にもなじみ深い港町を経てメキシコ湾に到達する旅程は3か月という長期に亘りますが、先ずは著者の旅の恥かき捨て的なコミュニケーションスキルに驚かされます。リバーエンジェルと呼ばれる川下り挑戦者の支援をする人々のみならずその辺の普通の住民や船乗りから労働者にいたるまで会う人会う人とどんどんネットワークを構築し、最後にはクラウドファンディングで資金まで集めてしまう逞しさは本当にすごいと思います。また、太陽光発電機とつながったスマホのグーグルマップのみを頼りに上陸可能地をたどり、時には無人島で休憩しつつ、何日もシャワーを浴びずに川の水で体を洗いながら、入手できたものを無理矢理調理して食べまくるサバイバル力にも脱帽いたしました。更に著者は体力のみならず、アメリカの歴史や宗教、文化にも一定の知見を有するインテリでもあり、ミシシッピ川の下流域に生息するワニ(比較的安全なアリゲーター)を観ても冷静沈着に対応する胆力をも兼ね備えたスーパーウーマンで、是非弊社に入社いただきたくさん稼いで欲しいと思ったのですが、この旅で出会った鳥の剥製製作に魅せられた著者は現在その道を極めるべく修行中ということで感性も我々のちっぽけな世界の枠には納まらない方のようなので潔く諦めました(笑)。以前紹介したマーク・トゥエインの「ハックルベリー・フィンの冒険」もミシシッピ川の支流であるオハイオ川周辺を舞台にした作品で、美しい流域の自然の描写など時代は違えど同じような雰囲気を感じましたし、大河流域では社会のひずみが顕著に表れ易いというのは今も200年前も変わらないのだなと感慨深く読みました。

「邪教の子」(澤村伊智著 文藝春秋)は、怪しい偶像に護符、巨額のお布施や教祖の不思議な力、周辺住民との対立ひいては内部抗争や脱会屋の存在までカルトのエッセンスがぎっしり詰まったおどろおどろしいホラーサスペンスです。ボギワンで如何なく発揮された澤村ホラーのぞくぞく感は勿論健在ですし、終盤になってそれまで感じてきた様々な違和感が氷解するカタルシスも味わえる満足度の高い一冊となっています。過激化するカルトは勿論怖いのですが、やはり何より恐ろしいのは人間の心に潜む得体の知れなさだなと痛感いたしました。しかし、例えば「誰かがこの町で」(佐野広実著 講談社)もそうなのですが、最近こういう近隣地域と一線を画した地方の町を舞台に設定した作品が多いなと感じます。実はうちの近所にもそういうエリアが有るのではないかと微妙にぞっといたしました。

去年はウミネコでしたが、今年はうちのマンションにハトの被害が出ているようです。妻と「今のところうちは大丈夫だね」と呑気に会話していたら、バルコニー的なところに木の枝が集められているのを見つけ、いつ営巣されるかと夫婦でびびっております(涙)。


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投稿者: 金次郎

読書が趣味の50代会社員です。

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