金次郎、大学時代のゼミ仲間と旧交を温め20代に戻る

先週、数年ぶりで大学時代のゼミの仲間4人で集まる機会が有りました。公務員、銀行員、商社、自営業というメンバーで、ゼミの研究テーマも国際金融だったことから、ロシアのウクライナ侵攻に端を発する世界的なインフレと久方ぶりの金利上昇局面への対応、不動産不調などに起因する中国経済停滞懸念、暗号通貨大手FTX破綻のグローバル金融市場への影響等マクロ経済のダイナミクスについて語り合ったかと思いきや、最初の話題は自営業O君の相続税対策はどうなっているの?という非常にミクロなものでした(笑)。その後、医学部志望の息子が私立に入ったら3千万かかるけどどうしようという銀行員S君に、下の娘さんも私大の医学部に行きたがったら併せて6千万円で破産だねと他人事なのをいいことに茶化したり、娘が駅まで車で送ってもらう時しか自分の顔を見ないとこぼす公務員のI君にそれはアッシーだと言って古過ぎると突っ込まれたり、あと約10年で定年だ、いや銀行員はもっと早くて大変だ、公務員は天下りができて羨ましい、いや最近はそういうのはあまり無い等と非常にしょーもないオヤジ話を連発いたしました(苦笑)。そしてその後は、武道の型のように毎回必ず定型で繰り返される学生時代の思い出話をネタ1からネタ10まで話終えて国際金融のコの字にも触れることなく、あっという間だったねー、と等と言いながら皆満足して帰路に着くいつもの展開でした。そのネタというのも、他大学とのインゼミ発表会に出てきたK大のあいつはちゃんと勉強していてムカついたとか、銀行に就職しますとゼミの先生に報告したら、これから銀行は大変なことになりますけど大丈夫ですかと言われその通りになって先生は凄いと思ったがもっと早く教えて欲しかったとか、ゼミの勉強もせずに通い詰め鼻から割り箸をぶら下げて遊んだカラオケボックスまだ有るかなぁ、いや絶対無いからとか、卒論不要のゼミなのがいいところなのに卒論を書いたあいつは異常だ等の非常にくだらない話でここで書いていてやや恥ずかしくなってきました(汗)。言いたかったことは、どんなに間が空いていても、再会すると一瞬で20代の気分に戻って、毎回同じくだらないことを繰り返し話すだけで楽しい時間を共に過ごすことのできる友人の存在は、これが死ぬまで続けられるんだろうなというイメージが湧くようになった最近特に貴重だなと感じている、というしみじみ感です。20代の頃に想像していた風格、財力、落ち着きを兼ね備えた50代像とかけ離れている点は、このまま死ぬまで円熟すること無くチャラく生き続ける軽めの人生を想起させやや情けないですがまぁ仕方無いですね(笑)。ところで今回の会合は久々の訪問となった名店いわ瀬で開催したのですが、改装がされていたり、元々美味しかったお料理に更に工夫が凝らされていたりと、コロナに負けないポジティブな気概を感じ元気をもらいました。マダムもお元気で相変わらず何かと世話を焼いていただき、こちらでも変わらず在り続けるものの有難みを感じ嬉しかったです。ちなみに金次郎が年齢を伝えた際にマダムが必ずしてくださる、うちの娘と同じじゃないのー、という鉄板のリアクションに心が和みました(笑)。

さて本の紹介です。「中世ヨーロッパ ファクトとフィクション」(ウィンストン・ブラック著 平凡社)は5世紀の西ローマ帝国滅亡から15世紀のルネサンスまでの約1000年間、ヨーロッパはひたすらに東方からの蛮族の侵入を恐れ続けるあまり、前進することの無い無知と野蛮の暗黒時代であったという通説に対し、その通説の根拠とされている資料批判と、こちらも一次資料に裏打ちされた新たに明らかになった事実に基づき明快な反証を行う内容となっております。金次郎も正に中世ヨーロッパ暗黒時代説を無批判に受け入れておりましたので、資料の読み込みはやや眠気を誘いましたが(笑)、目から鱗の発見が多く驚きの連続でした。具体的なフィクションの例として、中世においては、世界は球体でなく平面だと信じられていた、人々は入浴せず不潔だった、戦場では騎士が大活躍した、科学は抑圧され医学は祈祷とまじないに依存していた、魔女狩りが横行した等が挙げられており、逆に認識通りの内容だったので、それ違うの?と狐につままれた気分になりました。これらフィクションが広く流布した要因として、古代の影響を強く受けた中世前半の事象を中世全体に敷衍して適用してしまったこと、宗教改革の進展や新教国アメリカの影響力増大により、カトリック的なもの全般を蔑視、揶揄する風潮が存在していたこと、が背景に有るだろうと解説されていて非常に納得感有りました。資料を批判的に検証する姿勢の重要性、個々の事象はファクトであってもそれらの組み合わせ方によってはフィクションとなり得るリスクが常に存在していることへの意識は実生活やビジネスにおいても重要な気づきとして心に留めていきたいと思いました。

「カササギ殺人事件」(アンソニー・ホロヴィッツ著 東京創元社 )は翻訳ミステリーとして多くの賞に輝き、アガサ・クリスティへのオマージュに溢れたミステリー読みにはたまらない人気作品です。金次郎はそもそも最初から本作の構成に騙され、物語の主役である名探偵ピュントが活躍するシリーズ作品が実在していると勘違いし、しかもその名探偵が死にそうになっているシーンで始まるシリーズ完結作っぽい本作から読み始めてしまったことへの大後悔を抱えながら読み進めねばならないというハンデを負ってしまいました(涙)。混乱しながら読んだ当然の結果として、ジェームズ・ボンドシリーズやシャーロック・ホームズシリーズの続編執筆者として公認されている名手ホロヴィッツの仕掛けた企みに満ちた複雑なストーリーの謎が解ける筈もなく、まんまと彼の術中にはまる展開となりました。内容には触れられませんが、癖の有る登場人物達のうち、噂好きな家政婦を殺した犯人は誰なのかが全く分からぬままに上巻の最後で衝撃を受け、上巻の内容を作中作とする入れ子構造の下巻を一体これは何の話なのかと大混乱しながら読み、そして最後はこれまでに無い驚きの結末にカタルシスを感じるという大満足請け合いの秀作でおすすめです。

「汝、星のごとく」(凪良ゆう著 講談社)は凪良先生にとって「滅びの前のシャングリラ」以来久々の長編作品となります。親に縛られ、島に縛られ不自由を感じる暁海(あきみ)と、奔放な母親に振り回されたトラウマから現実に抗うことを諦めた櫂(かい)が瀬戸内の島で出会い、共に思い合いながら躓き悩んで成長していくという王道ストーリーとなっています。物語の作り方としては非常にオーソドックスなプロットにマンガ創作と刺繍について少し書き込んで深みを出している以外にはあまり新味が無く、プロローグで提示された本筋からは少しそれた謎一本で最後まで引っ張らざるを得ない展開が若干苦しいとの印象ではありますが、凪良先生ならではの様々な〈生きづらさ〉を描く繊細なタッチは既刊作同様心を打つ力が有るなと思いました。

同僚が最近噂のコロナとインフルの同時罹患をされて心配していましたが、無事回復されたようでほっとしました。妻が4回目接種で激しい副反応を食らっていたのを見て、五十肩と副反応のダブル罹患には耐えられそうもないと4回目を一旦キャンセルしたヘタレ金次郎でした。

 


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投稿者: 金次郎

読書が趣味の50代会社員です。

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