金次郎、お世話になった方からの依頼で父から15歳の息子に贈る本を選出

どうにかこうにかweeklyでのupを維持しております本ブログですが、次回はスケジュールの関係でちょっと間が空き4月3日(日)あるいは4日(月)の投稿となり、そこで金次郎と宿敵Mの本屋大賞2022順位予想を大発表いたします。その後6日(水)の大賞発表を受け、8日(金)か9日(土)に予想対決結果をご紹介する予定にしております。どうぞお楽しみに!

さて、今回は敬愛する先輩であり、シンガポール時代より家族ぐるみで仲良くさせていただいているAさんからこの春より高校生になるご長男に贈るべき本を見繕って欲しいとのご依頼があったので、こちらで紹介させていただこうと思います。いざ考え始めるとこれは大変な難問で、お父さんの思いも息子さんの趣味もある程度踏まえていないと不適切なチョイスになりそうで、悩みに悩み、この数年で読んだ2000冊超のリストを頭からひっくり返すこととなりました。結局、自分の好きな本が中心になってしまい本ソムリエとしての才能の無さを露呈する結果となってしまいましたが、以下が絞りに絞った10冊となります。Aさん、ちょっと偏ってしまいすみません。

【Aさんのご子息への紹介本10選(順不同)】

◆「銃・病原菌・鉄」(ジャレド・ダイアモンド著 草思社 ):人類の進化の歴史とその背景を地球的視野で語るこの本は、高校生にはちょっと難しいようにも思いますが、金次郎としては本格的に歴史や地理の勉強をする前に読んでおきたかった一冊です。メモを見ながら内容の詳細を思い出し選びましたが、冒頭のニューギニア人であるヤリさんと著者とのやり取りは非常に印象に残っています。これを選んでしまったので、泣く泣く「サピエンス全史」は候補から落としました。

「徳川家康」(山岡荘八著 講談社):金次郎は父の本棚に鎮座していたこの全26巻を眺めながら成長しましたが、実際に読んだのは成人してからで、もっと前に読み、内容について父と語り合うべきだったと後悔しまくった、様々な人生の機微を疑似体験できる歴史大河小説です。人生の節目で何度も読み返す人が多い、新たな発見の宝庫である本作の存在を心に留めていただければどこかできっと何かの役に立つと思います。

「動物農場」(ジョージ・オーウェル著 早川書房):言わずもがなの名著ながら全体主義、スターリン主義批判ということでやや歴史的モメンタムを失っていたものの、新たな全体主義の足音が幻聴ではなく聞こえ始めたこの時代に改めて若者の記憶の端にでも残しておきたい内容と思い選出いたしました。先ずは、何だこの意味不明な動物の話は、と怪訝に思ってもらい、その後歴史を学んで、これってまさかあの話では、とリンクして驚いて欲しいというのが金次郎のささやかな企みです。

「バッタを倒しにアフリカへ」(前野ウルド浩太郎著 光文社):アンリ・ファーブルに心酔するバッタ博士の著者が西アフリカのモーリタニアで苦労しながらバッタ研究を続ける体験記です。面白く読み進める中で、仮説を導く発想、検証に向けた色々な工夫、やりたい事への共感を集めて仲間を増やす方法論、現場に赴くことの大切さなど、人生において重要なことが学べる良書だと思います。

◆「十五の夏」(佐藤優著 幻冬舎 ):最近このブログでも紹介しましたが、まさに15歳のこの時期にウクライナ危機を経験している今こそ読むべき旅行記と思い選びました。佐藤先生の常人離れした人生は全く参考にはなりませんが、旅行もままならぬ昨今、日本にいては感じ取ることのできない危機感を体感して欲しいと思います。旅行記かぶりということで涙を呑んで「深夜特急」は外しました。

「地下鉄道」(コラソン・ホワイトヘッド著 早川書房):オバマ元米国大統領も推奨したこの本は、悲惨な南部黒人差別の実態を描き出すばかりでなく、リベラルの仮面を被った人間の偽善をも暴き出すちょっとシリアスな内容です。ただ、そういう時代に命懸けで黒人たちの逃亡を支援した結社〈地下鉄道〉に関わった人々の思いに何かを感じて欲しいと思い選びました。

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「四十八の冬」の金次郎が佐藤優先生の「十五の夏」に感銘を受ける

3月は本屋大賞の予想をする月のため読書スケジュールがかなりタイトなのですが、そこに「闇の自己啓発」関連の課題図書が加わり非常に厳しい状況です。そして更に、読み始めてしまったら止めるのは難しいと分かっていたのに、田中芳樹先生の「アルスラーン戦記」シリーズにまで手を出してしまいもはや瀕死の状態です。ぶり返している睡眠障害のおかげで何とかなっているという八方ふさがりでそこそこ辛いです。

さて、以前もこのブログに書きましたが、〈知の巨人〉としてリスペクトしている佐藤優先生の本は知的好奇心から常に読みたいと思っている一方で、自分の浅学さを突き付けられるのが辛いので若干躊躇する気持ちも否定できず、アンビバレントな葛藤の中で著作リストを眺め続けているうちにかなり時間が経過していて、この悩んでいる時間に100ページぐらい読めたのに、と後悔することがかなり有ります。

そんな中、少し前に入社当時よりお世話になっている大先輩の方から「十五の夏」(佐藤優著 幻冬舎 上巻下巻)をご紹介いただく機会が有り、金次郎の心のシーソーが、読む、の方に傾き久々に佐藤先生の本を手に取りました。

この本は、埼玉県立浦和高校に合格した優少年が、合格のご褒美として高1の夏に行かせてもらった東欧から当時のソ連への40日間の一人旅について綴った旅行記です。ハンガリーにペンフレンドがいたことや違う社会体制の国々の実情を見聞することに意義を見出したこと、という背景は勿論理解可能ですが、1975年の冷戦のさ中に15歳の息子にそういう旅をさせるご両親、それは人生を変える経験になる、と前向きに送り出す周囲の大人たちの感覚はやはり現代とはだいぶ違うと感じます。

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