今回はコナン・ドイル先生とその公認後継者アンソニー・ホロヴィッツ先生尽くし!

金次郎は小中学生時代コナン・ドイル先生のシャーロック・ホームズシリーズを読み漁って過ごしましたが、1927年に終了したこのシリーズに80年ぶりに書かれた続編が存在すると最近知り、以前このブログで書いたイギリスの超売れっ子であるアンソニー・ホロヴィッツ先生がコナン・ドイル財団公認の作家として著された「シャーロック・ホームズ 絹の家」と「モリアーティ」を大感謝しながら読了いたしました。感想は後程紹介するのですが、突然ですが皆さんはガイアナ共和国という国をご存知でしょうか。

南米では珍しく英語が公用語の旧イギリス領で、これまた南米ではレアなインド系住民が人口の約4割を占めているという(ちなみに残りはアフリカ系が3割、混血が2割)異例ずくめの国で、日本人には馴染みが薄いので殆どの方は聞いたこともないのではと思います。独立前は英領ギアナと呼ばれていて、近隣のコロンビア、ベネズエラ、スリナム、仏領ギアナ、ブラジルと共にギアナ高地として知られる多数のテーブルマウンテンを有する地域に位置する国ですが、そう、先述したコナン・ドイル先生による名著「失われた世界」の舞台になったところなのです!つまりは映画「ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク」の舞台ということになりますね。この恐竜が生き残りそうなほど外界から隔絶されているイメージのガイアナは、面積は日本の本州程度で人口もわずか80万人と本当に小国だったのですが、なんと現在驚くべき経済成長を達成している国となっているのです。たった30年前の1990年代には一人あたりGDPが僅か200ドルと世界最貧国レベルだったものが、2015年に沖合で大油田が発見されて以降状況は一変し、昨年の推計値でこの数字がなんと18000ドルと90倍に拡大しているのです。更に、今後2030年までに産油量が現状の日量40万バレルから120万バレル以上と3~4倍程度まで増えると見込まれていることから、石油王でお金持ちのイメージが強い世界有数の産油国サウジアラビア(同23000ドル)を軽く抜いて、昨年金に物を言わせてサッカーワールドカップを開催したことが記憶に新しい中東の超リッチ国であるカタールの同62000ドルに迫るお金持ち国家になると見込まれていてその成長ペースに驚かされます。原油を掘る際に一緒に生産される天然ガスはロシアによるウクライナ侵攻後特に高価になっていますが、これを自国で入手できるというのは大きな利点で、このガスを燃やすガス火力発電設備を充実させることができるため、安定した経済活動に不可欠な電力インフラが整備されることによる更なる成長も期待されています。電力インフラがボロボロになって多数の国民が国外に逃げ出すことを考えているやや落ち目の南アフリカと比べてみると分かりやすいかと思います。そもそもガイアナという地名が〈水の豊かな場所〉という意味の現地語に由来していて、原油で稼いだお金を使ってこのところ二酸化炭素を排出しないクリーン電力として引く手あまたの水力発電事業も手掛けられるようになれば様々な産業誘致の可能性も拡がるので、少し前まで世界の成長に取り残されたリアル失われた世界だった小国がどんな発展を遂げることになるのか、人類史上類を見ない急激な社会構造の変化がどのように進み人々の暮らしや国民性にどう影響するのか、大変興味を持って注目しているところです。

珍しくやや真面目なうんちく的内容となってしまった感が有りますが(笑)、予告通りホロヴィッツ作品をご紹介します。「シャーロック・ホームズ 絹の家」(アンソニー・ホロヴィッツ著 KADOKAWA)は、ある理由からホームズが活躍していた時代に発表できなかったエピソードについて、老境に入った相棒ワトソンが思い出しながら語るという構成になっております。ホロヴィッツ先生は続編の執筆にあたり自らに10か条の制約を課したそうで、その内容は度が過ぎたアクションは入れない、ホームズの恋愛は描かない、19世紀らしい表現を心がける、調査は徹底的に、オリジナルの登場人物を意表を突く形で登場させるといったもので、実際の中身を読むとこれらの効果がしっかりと出ていて所謂〈聖典〉と呼ばれるオリジナル作品を読んでいるかのような興奮が蘇って大満足できます(重箱の隅をつつきたがるシャーロキアンの皆さんは色々文句を言うとは思いますがw)。シャーロックの兄マイクロフトをはじめ、あの人もあの人もちゃんと出てきますし、ベイカーストリートイレギュラーズも重要な役目を担っていますし、過去の作品にもたくさん言及されていて非常に楽しめる上に、ロンドン社会の闇に隠れてなかなか姿を現さない〈絹の家〉のラスボス度合いもパンチが効いていてミステリーとしても充分読むに堪える続編としては傑作の部類に入れていい作品だと思います。次作の「モリアーティ」(同)は言わずと知れたホームズの宿敵でイギリス犯罪社会の帝王であるモリアーティとホームズがライヘンバッハの滝の付近で格闘する「最後の事件」前後の出来事が描かれる設定になっていますが、物語自体はアメリカ人探偵のフレデリック・チェイスと〈聖典〉ではホームズにやり込められる当て馬役のスコットランド・ヤードの刑事アセルニー・ジョーンズ警部のバディがアメリカの犯罪組織を追い詰めるという構成で、これ以上内容に触れることができませんが、ずっと違和感を感じながら読み続けることになります。金次郎的にはホームズシリーズに対しては勿論、著者が敬愛するアガサ・クリスティ大先生へのオマージュもしっかり盛り込まれているところが気に入ってはいるものの正直「絹の家」の方が面白かったかなとの印象です。

ここまで来たらもうホロヴィッツ先生尽くしでいってしまいましょう(笑)。以前紹介したミステリー7冠作品の「カササギ殺人事件」の続編となるのが「ヨルガオ殺人事件」(アンソニー・ホロヴィッツ著 東京創元社 )です。あるホテルで過去に発生した殺人事件と現在進行中のホテルオーナー夫妻の娘の失踪事件を、前作の主人公であったスーザンが追うというストーリーですが、嫌な奴作家のアラン・コンウェイによる名探偵アディカス・ピュントシリーズのミステリーが作中作として重要な役割を果たすという構成も「カササギ~」と同じ構造になっています。スーザンがひたすら聞き込みをし続ける上巻の間延び感は否定できませんが、とにかく作中作の「愚行の代償」がそれだけで単行本となり得るぐらいに充実した内容で面白く読めます。更に「愚行~」の中にもちょっとした短編ミステリー的エピソードが含まれていて、ネタの大盤振る舞い度合いに、いつもネタ不足に苦しむ金次郎としては、本当に勿体なさ過ぎると心から思ってしまいます(笑)。前作に続きアガサ・クリスティ作品へのオマージュにも溢れており、質の高い犯人当てミステリーだと思いますが、一点難点を挙げるとすれば「カササギ~」を読んでいないと存分には楽しめないという続編の宿命ぐらいでしょうか。ちょっと長いですが、1冊で3冊分楽しめる内容なのでミステリー好きの方にはぜひ読んでいただきたい作品です。ホロヴィッツ先生はこの他にも自らを作中に登場させるパターンの、語り手アンソニーホロヴィッツと元刑事の変人ホーソーンという凸凹バディが難事件を解決するというホーソーンシリーズも手掛けられており、かなりぎりぎりな現実とのリンクも楽しめる内容になっています。金次郎は「メインテーマは殺人」(同)、「その裁きは死」(同)のいずれも没頭して一気に読んでしまいました。どちらも海外翻訳ミステリー4冠を達成した人気作ですので、ホロヴィッツ作品をもう一段深掘りしたいミステリー好きの方にはこちらもおすすめです。

ゴールデンウィーク恒例行事となっていますが、夫婦で「名探偵コナン 黒鉄の魚影(サブマリン)」を観に行きました。次第に黒ずくめの組織との最終決戦に向けストーリーが盛り上がる一方で、ミステリー要素の質が下がっているのが気にはなります(笑)。黒ずくめの組織にかつてほどの圧倒的脅威を感じなくなってきているのは金次郎だけでしょうか?


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投稿者: 金次郎

読書が趣味の50代会社員です。

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