50歳の金次郎、今更アメリカ50州の基礎知識入門書を読む

相変わらず大谷選手の大活躍は続いていますが、ふと彼の所属するLos Angeles Angelsという球団名はAngelが被っていることに気づき、〈天使たちの天使〉みたいな意味になっていてちょっと笑えました。日本語では表現しにくいですが東京ミヤコズみたいな感じでしょうか(笑)。あまり関係有りませんが、前々からたくさん有るアメリカの州について興味を持っており、今回「最新版 アメリカの50州がわかる本」(時事アナリスツ著 河出書房新社)を入門編として読んでみました。

とりあえず「へぇー」と思ったうんちくの数々と、馴染みが無さ過ぎて驚いた各州の州都を以下で羅列的に紹介いたします。東部ペンシルベニア州の州都は早速聞いたことの無いハリスバーグでいきなり面食らいますが、州の名前はイギリス人でクエーカー教徒の入植者であるウィリアム・ペン氏に因みペンの森という意味のペン+シルベニア(=森)になったのだそうです。おもちゃのシルバニアファミリーは森の家族という意味なのでしょうか。フランス語で緑の山という意味のバーモント州の州都はこちらも初見のモントピリアというところで、日本人にはバーモントカレーで有名な地名であり、我々世代の脳内では漏れなく西城秀樹さんのリンゴとハチミツ♪のフレーズが瞬時に再生されますね。これは何と同州でかつて流行していたリンゴ酢とハチミツを食する〈バーモント健康法〉にヒントを得て名づけられた商品名なのだそうで、あのカレーが健康食品だったと知り愕然といたしました(笑)。日本人にはほぼ見分けのつかないサウスカロライナ州(州都コロンビア)とノースカロライナ州(同ローリー)ですが、サウスカロライナは南北戦争までは全米で最も栄えた州であり奴隷を使った農業が盛んであった流れを受け現在でも米や大豆の生産が主要産業だそうです。一方その北のノースカロライナはというと、なんとニューヨーク州に次ぐ金融都市で、ノースカロライナナショナルバンクが後のバンクオブアメリカになったとのことでやや意外でした。バイオテクノロジー産業も集積していて洗練度が高く、名前は似てるのにアッパーサウスとディープサウスでは全然違うんだなと感心いたしました。ノース側ではかのライト兄弟がライトフライヤー号を初めて飛ばしたアウターバンックスのキティホーク(実際はキルデビルヒル)も有名です。続いて州都はコロンバスであるオハイオ州ですが、こちらはネイティブアメリカン(以下NA)のイロコイ族の言葉で美しい川という意味だそうです。この州のオーバリン大学に因んで名づけられたのが町田の桜美林大学というのは、やや上手いことやってやった感が鼻につき行き過ぎ感を禁じ得ません(笑)。イリノイ州は全米第3位の都市シカゴを差し置いて州都はスプリングフィールドですが、ほぼ平野ばかりの州で標高が一番高い丘よりも高層ビルの方が背が高いという平たさぶりに驚きます。ミネソタ州はアメリカの冷蔵庫と呼ばれるほど寒いところですが、ミネソタ・ツインズというMLBのチームで知られています。別に双子だからといって強いわけではないのに何故ツインズ?と不思議に思っておりましたが、州都セントポールと川を挟んで向かい合うミネアポリスが双子都市になっていることに由来するチーム名なのだそうです。双子都市の意味もよく分かりませんが(笑)。元は一つの州であったノースダコタ州とサウスダコタ州ですが、ダコタとはNAの言葉で同盟を意味するようで、多数の部族が同盟して白人移住者と戦った悲しい歴史を想起させます。ノースダコタの州都はドイツ風の名前になっているビスマークで人口の6割超を占めるドイツ系移民に配慮した格好となっています。南部オクラホマ州は西部地域とやや趣が違い、元々東部に居住していたNAを強制移住させた地域で、州名の由来は彼らの言葉で赤い人という意味となりやや現代の感覚にはそぐわない気がします。65部族27万人が移住させられたとのことで、元々は彼らだけを住まわせる専住地域とする想定でしたが、1889年に連邦政府により施行された到着順に土地取得を許すというランドラッシュ政策により大量の白人が押し寄せることになり、またもNAの人々の安住は妨げられることとなってしまいました。こういった史実から同州は早い者勝ち(=スーナー)の州という別名でも呼ばれています。赤い水という意味のコロラド州の州都であるデンバーはちょうど海抜1マイルの高地に位置することからマイルハイシティーという愛称で呼ばれており、町中の至るところにマイルハイと記されているようで面白いです。デンバーは唯一開催が決定していたオリンピックを辞退した都市としても有名で、きっとコロナで開催が危ぶまれた東京オリンピックの際もそんな話題が出ていたのだと思いますが全く気付きませんでした。その他こぼれ話としては、来日して人気を博したプロレスラーの多くがウエストテキサス大学でアメフトをやっていた人々だったという小ネタが紹介されており、世代的にど真ん中であるスタン・ハンセンやブルーザー・ブロディの映像が浮かんできて非常に印象的でした。また、宗教国アメリカでは結婚や離婚の手続きが煩雑な州が多いのですが、ラスベガスの有るネバダ州は人生はギャンブルだから当たり外れは付き物というわけではないのでしょうが、それら手続きが簡易に済むらしく、全米から結婚や離婚をするために多くの人が集まるそうで、なんとドライブスルー結婚手続きというサービスも有るそうです!ブリトニー・スピアーズの結婚後55時間でのスピード離婚騒動もラスベガスでのエピソードです。

圧倒的に前置きが長くなってしまいましたが読書ブログということを忘れずに本の紹介です。「黄色い家」(川上未映子著 中央公論新社)はもしかしたら村上春樹大先生よりノーベル文学賞に近いかもしれない川上先生による、カネと4人の女性のシスターフッドを描いた恐ろしくも奥深い大変優れた作品でした。既に海外での翻訳発売も決まっており、当然本屋大賞2024ではノミネート作品に名を連ねることが想定され、以前恒例企画の本屋大賞予想対決「夏物語」(同 文藝春秋)を大賞に推して7位に沈み宿敵Mに敗れ去った苦い過去が有る金次郎は、本作の取り扱いについて気が狂う程に悩むことが今から確定しており気が重いです(笑)。本作のストーリーは、主人公花(はな)が偶然目にしたかつて共に暮らした人物が関与したとされる事件の記事が、それまでずっと蓋をしてきた過去の記憶の封印を解くカギとなり、彼女の苦しかった幼少期から女性4人での奇妙な共同生活を送った日々の回想をスタートさせるところから始まります。計画性や責任感に加え金銭感覚にも欠けている母親との貧しい暮らしから抜け出すべく必死でバイトに明け暮れて貯めたお金をあっけなく失って途方に暮れる花と、なんとも形容し難く大人物なのか抜けているのか判然としない不思議な女性である黄美子との危うい共同生活が、そこに更に全く頼りにならない蘭と桃子という二人の攪乱要因が加わり心もとなさを増しつつも、どうにかこうにか進んでいきます。彼女たちの拠り所は〈西方向の黄色い物〉が金運を引き寄せるという風水の教えでしたが、不動産の賃貸契約書はおろか銀行口座すら無いあまりにも脆弱な生活基盤故に、どんなに必死に努力して短期的な収入を得ることができたとしても、彼女たちの暮らしが安定軌道に乗ることは無く、無情にもお金は失われ更に風水に激しくのめり込むという悪循環に陥っていきます。ある事件をきっかけに彼女たちは悪事に手を染めていくのですが、そんな中で黄色い家での生活はカオスの度を増していくのかと思いきや、少なくとも金次郎にはかなり意外な形で4人の中に支配、被支配の秩序が形成されたのみならず、いざ出来上がってみるとその秩序が整然としていることに驚かされると同時に、人間の本能にプログラムされた社会性というものの存在を感じさせられました。絶対に持続不可能なカネ儲けではあるものの、カネという物が与えてくれる人生の執行猶予という安心感を得るべく心を殺して必死で働く彼女たちの姿に人生の本質的な儚さや虚しさを感じる一方で、共同作業そのものから得られる高揚感や充実感の存在もまた事実であり、生とは死を引き延ばす営みなのか、はたまた死を忘れることこそ生の実感なのかといった死生観についても考えさせられる大変奥の深い小説だったと思います。川上先生ご自身が経験された貧困や水商売の陰の部分の描写には目が離せなくなるリアリティが有りますし、そんな実体験が命を吹き込んだかのような脇役たちの凄まじい存在感も読んでいて飽きさせない理由の一つだと思います。「侮られたら終わり」という言葉のリアリティがかなり心に刺さりました。金次郎の拙い説明ではこの素晴らしい作品の良さを1%も伝えきれていないと思いますので、少しでも興味の有る方はぜひ読まれることをおすすめいたします。

昨年9月に友人が急逝したとブログに書きましたが、彼のことを思い出してお互い悲しくなると思い誘う勇気が出なかった、彼と一緒によく食事した飲み友にようやく声を掛けることができました。わいわいと楽しく喋って少しだけ思い出を消化することができたと思います。

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投稿者: 金次郎

読書が趣味の50代会社員です。

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