金次郎、「世界標準の経営理論」でビジネス気分(前編)

このブログを始めて約1年半、投稿数も100件を超え、意外と飽きずに読んで下さる方もいらっしゃって、ネタ切れの恐怖に怯えつつもどうにか細々と続けられております。皆さまどうもありがとうございます。

こんなブログをやっているんです、と知り合いに披露していると、以前にも少し触れたかもしれませんが、どうやって読む本を選んでいるのかとの質問を受けることが多いので、今回は改めてその辺りについてまとめてみようと思います。

先ずはやはり売れ筋チェックということで、①読書メーターの週間・月間ランキングを常に確認して上位に入っている本をじっくり眺める、が基本です。読書メーターは自分の読んだ本を登録して読書記録がつけられるサイトですが、入力がちょっと面倒くさいのでそちらの機能は使わずにもっぱらランキング確認目的で見ております。5年前ぐらいまでは文芸書をあまり読んでおらずその重要性を感じていませんでしたが、本屋大賞予想を始めてしまった頃から逆にこちらが気になって仕方がありません。完全にキャラ変です。

そして、気に入っていつも観ているのが②TBS王様のブランチのBOOKコーナーです。毎週土曜日の11:20頃から、LiLiCoさんの映画コーナーの後に始まる同コーナーは小特集、ランキング、特集という三部構成になっていることが多く、有名作家が出演する機会も結構あるので、なかなかに充実しています。よく出演されるクレイジーサヤカで有名な「コンビニ人間」の村田沙耶香先生がしゃべっているのを見ると、やはりアチャーと思いますが楽しいですね。後に本屋大賞で上位に進出することになる作品を先見の明で紹介していることも多くチェック必須の番組となります。写真集やグルメ本などが小特集で取り上げられると若干がっかりの気分になりますが、気づけば毎週欠かさず見ているバラエティ番組はこのブランチと木曜日TBSのプレバト俳句コーナーだけとなっているテレビ離れぶりです(笑)。

あとは、③日本最大級のオーディオブックサイトであるAudiobook.jpの新刊とランキングは定期的にチェックするようにしています。ちょっと他のランキングと趣が違うので面白いと思っています。ビジネス書が結構多いのが特徴です。その他には、④気になる作家の本を集中して読む、⑤興味の有るキーワードで検索して引っかかった本を読みまくる、⑥本の最後にだいたい載っている参考文献を読み漁ってその分野を深掘りする、⑦書評家と呼ばれる人々の紹介コーナーを見る(杉江松恋さん・松井ゆかりさんなど)、⑧読書好きな友人から紹介を受ける、⑨文学賞のノミネート作・受賞作を読む、という具合でしょうか。

そこに最近情報ソースとして加わってきたのが、⑩Twitterの読書好き界隈から情報を得る、です。トランプがアカウントを凍結されたちょうど半年前ぐらいからやり始め、全くTwitter界のプロトコルが分からず今でも勉強中ですが、なかなかの情報量な上に、どうやら読書好きの皆さんのコミュニティは、時には激しいやり取りが繰り広げられると聞き及ぶ他の界隈と違い、のんびり寛容な文化のようで金次郎のような初心者にも優しく「いいね」を気軽にくれたりして心が安らぎます。読書垢の皆さんが書いている#名詞代わりの小説10選、は結構面白く参考になりますし、自分のツイートにも#読了、#読書好き、#読書好きと繋がりたい、などのタグを付けると有用というのがようやく分かってきて、感想つぶやきも少しずつ楽しくなっております。ただ、140字で題名、著者名、上記タグと併せて感想を書くのは非常に難易度が高く、結果推敲に推敲を重ねたツイートとなり、単なるつぶやきとは思えぬ堅苦し過ぎる仕上がりになってしまい、ちょっと浮いているなと悲しくなることも多々有ります(苦笑)。あれ、いつの間にか情報収集でなくツイートがメインになってしまってますね(笑)。沼にはまらぬよう気を付けます。

その他には、非常に邪道で全くなんのお役にも立たないと思いますが、⑪読書冊数を稼ぐためにシリーズ化作品の文庫版を読む、という意味不明なもの、あまり新聞を読んでいないのでたまにということで⑫新聞の書評欄を参考にする、というぐらいでしょうか。皆さんの本選びの参考になればと思いますが、とりあえずこのアフター4読書を読んでおいてもらえれば、そんな①~⑫のエッセンスが堪能できる仕組みになっている、との手前味噌アピールでした(笑)。

さて、いよいよ「世界標準の経営理論」(入山章栄著 ダイヤモンド社)の紹介です。入山先生といえば、「世界の経営学者はいま何を考えているのか:知られざるビジネスの知のフロンティア」(英治出版)で最先端の経営学を分かり易く解説されていたとの好印象が頭に残っており、その良いイメージが有ったのでこの800ページ超の大著に挑戦することができました。とは言え、理想的には週末でだいたい4冊程度を読んで冊数を稼ぐ必要があるのに、週末を丸々使ったとしても、どうにかこの1冊を読み終えられるか微妙なところであり、年間365冊を目指す冊数至上主義(苦笑)の金次郎にとっては大変な痛手となる予感もあり最初は非常に不安な気持ちで読み始めました。

ところが、本書では、今一つ得体が知れず後付けの学問と揶揄されることも多い経営学の多岐にわたる様々な理論を、経済学、認知心理学、社会学のそれぞれと関係の深いグループに分類し、既に理論的枠組みが固まっているこれらの領域からどんな理論を借用し、如何にして筋の通った経営〈理論〉たらしめているのか、を論理的に解説してあり、なんともすっきりする内容だったので、意外と冊数は気にならず集中して読み通すことができました。

また、しばしばさしたる説明もなく唐突に経営企画的な部署から発出される〈企業の経営方針と戦略〉に少なくともその背景理解を可能にするロジックと、行動に繋がる腹落ち感を確り与えてくれるこの本は、金次郎のような迷える一般サラリーパーソンには極めて有用な〈使える〉経営学の本だなと感じ、会社の同僚にも結構薦めてまわりました。ということで非常におすすめの書ですので、読み通すもよし、辞書代わりに使うもよし、という感じでぜひお手元に置いていただければと思います。そこまで薦めるのも変ですね(笑)。

中身については、この方のブログが丁寧で全く勝てる気がしませんが、6章のエージェンシー理論で解説されている、不祥事はモラルの問題ではなく組織や制度(=ガバナンス)の不備がエージェントの〈合理的選択〉として不適切な行為に向かわせるという点や、7章の取引費用理論のところの、取引費用の考え方が企業の範囲(=企業とは何か)までも規定する、などの点は非常に興味深く読みました。

また、12章、13章あたりのイノベーションのお話で、如何に知の探索を遠くまで行うことが重要か(=創造性は移動距離に比例する)というのは日ごろ気にもしているポイントで大変共感しましたし、15章で激賞されている野中先生のSECIモデルの解説の中の〈知的コンバット〉が組織には必要であるとのコンセプトには納得感有りました。

16章で語られる、組織が進化するにはルーチンを根付かせて効率を上げる必要があるという部分は、ともすれば軽視されがちなルーチンワークの構造的な重要性に光が当たっていて目からうろこの気分でした。そして、17章のダイナミック・ケイパビリティ(DC)理論では、どうすれば企業内にDCを作り出し持続的な競争力が維持できるか、についてのヒントが前章のルーチンの話と関連付けて解説されていて(シンプルルールなど)、他の経営学の本と比較してwhyの部分の背景説明に踏み込んでいる本書の特徴がよく出ていると感じました。

ちょっと長くなってしまったので、続きは次回ということで。今回は珍しく紹介本がたった一冊でした。前置きが長すぎましたね(苦笑)。

投稿者: 金次郎

読書が趣味の50代会社員です。

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