コロナの時代に「美しき免疫の力」を読み免疫について学ぶ

読書家としての一大イベントである本屋大賞対決が終わり、しかも2連敗という結果となってしまい、やや燃え尽き気味でブログを書くモチベーションが高まらぬ中、勝者Mから以下のようなコメントが届きました。

“今年は1位と3位を当てたので私の完勝と言っても良いのではと思います(笑)。 金次郎さんの来年の捲土重来に期待しております!”

こんな普通のコメントをする者に負けるとは、臥薪嘗胆、不惜身命、一意専心で捲土重来したいと思います。

しかし、おかげさまでこの本屋大賞企画は皆さまにたくさん読んでいただいており、非常に速いペースで弱小ブログとしての第一目標である200PVを越えました。通常はそこまでいくのに早くても2か月程度はかかるので、2週間足らずで到達というのは非常に嬉しい結果です。読者の皆様どうもありがとうございます。

ついでに以前の記事のPV数を見直してみたところ、投稿当初はマニア過ぎたのか伸び悩んでいた「興亡の世界史」シリーズ(全21巻)を紹介した記事がいつの間にか400前後のPV数まで増えており、どこからビューが湧いてきたのか全く分からずかなり謎ではありますが、本当に興味深い内容のシリーズだったので、このブログが少しでも読者数増加に貢献できていれば嬉しい限りです。

「興亡の世界史」シリーズ(全21巻)を遂に読了~前編

「興亡の世界史」シリーズ(全21巻)を遂に読了~後編

さて、今週の紹介はずっと積読になっていた「美しき免疫の力:人体の動的ネットワークを解き明かす」(ダニエル・M・デービス著 NHK出版)です。この本だけだと難しいので、参考資料として「現代免疫物語beyond:免疫が挑むガンと難病」(岸本忠三著 講談社)も一緒に読んで力を借りました。

これらの本は、非常に複雑で精緻な機構を有する免疫システムの説明を、その解明と医療への応用の歴史と共に解説してある科学書です。未だ謎の部分も多い免疫システムについてその全貌を理解するのはそもそも不可能ですが、COVID19

のワクチン接種も始まったということで、なんとか基礎的な仕組みだけでも頭に入れたいと思いつつ行きつ戻りつしながら読み進めました。

しかし、先ず、免疫とは体内に侵入してきた細菌やウイルスのような異物を、自己と非自己、有害と無害に選別し、非自己・有害と認定したものに対して攻撃を仕掛ける機構と定義できるわけですが、その働きの95%を占める自然免疫と、しぶとく生き残った異物に対して発動する獲得免疫に分けられる、という初歩の初歩を知るところからのスタートなので正直道のりは険しかったです。

本当に免疫系の仕組みは複雑怪奇なのですが、特に印象深かったのは、侵入してきた異物をばらばらに分解してT細胞に提示する(抗原提示)機構を持った樹状細胞という組織や、この抗原を異物認定したT細胞が異物を殺すために変化し増殖したキラーT細胞の働き、更にはキラーT細胞による攻撃を適度なところでオフにする優れもののシステムなどでしょうか。

このオフ機能が細胞間の情報伝達を司るホルモンのような働きをするサイトカイン(インターロイキン=ILやインターフェロン=IFNなど)の異常分泌などによって阻害されると、間接性リウマチやI形糖尿病などの自己免疫疾患となってしまったり、悪性腫瘍であるガンは、そもそもが自己組織なので免疫系が働きにくいという厄介な特徴が有る上に、勝手に免疫の働きをオフにするおとりのような仕組みを持っているなど、どこまで分かったか微妙ですが勉強になる内容がふんだんでした。

人体では複数の体内時計が動いていて、免疫系は夜間の時間帯に活性化するので、やはり夜の睡眠が重要であるとか、免疫システムが恐らくサイトカインの分泌を介して腸内フローラとコミュニケーションし内臓の機能を保持しているなど、これからもっと研究が進んで欲しい分野についての記述もあり、免疫システム研究においての日本人科学者の大活躍も詳説されている上に、樹状細胞研究の第一人者で京大の副学長をされていた稲葉カヨ先生と金次郎が敬愛する先輩が知り合いだったという事実が今週分かりとても心に残る本となりました。

全体的にかなり難しかったですが、何はともあれ、vaccine(ワクチン)という言葉が、エドワード・ジェンナーが牛痘から種痘法を編み出したということから、雌牛を著すラテン語のvaccaに由来していると知り、うんちくが一つ増えたので最低限はクリアかな、と思います(苦笑)。

話はがらりと変わりますが、なぜだかすっかりこのブログで紹介したつもりになっていた名作シリーズの近刊を読んだので一挙紹介です。

「チーム」(堂場瞬一著 実業之日本社)は鉄板ネタの箱根駅伝ものではあるものの、通常は日の当たらない学連選抜チームを取り上げているのが特徴的で、孤高の天才山城と他メンバーの気持ちが通い合わないもどかしさを堪能する物語となっています(笑)。しかし、最後に天邪鬼山城が放った一言が読み手にカタルシスを与えてくれると同時に、シリーズ全編を通じて彼を苦しめることになるので、ぜひそういう目線で読んでいただければと思います。

その次に読むべきが「ヒート」(同)で、こちらは日本再興のマラソンランナーとなった山城が相変わらずの傲慢ぶりを発揮しつつ、世界記録を出すために誂えられた舞台で嘗てない勝負に臨む、というお話で、大会運営側の苦労に焦点が当たっているのが非常に面白いと思います。最後がめちゃくちゃ気になる形で終わるので、位置づけ的には続編となる「チーム2」(同)を早く読みたくなること間違い無しでしょう。こちらでは、競技生活で初めてと言ってもいい故障と所属チームの消滅危機という壁にぶつかった天才山城が苦しむ様子を通じ、企業スポーツの抱える課題を浮き彫りにしています。山城を助けるために結成されたはずの〈チーム山城〉があまり貢献していないのがちょっと微妙ではあります。

そして今回読んだ最新刊である「チーム3」(同)では、天才、無愛想、他人に興味無し、と指導者には全く向かない山城が日本のマラソン界を背負って立つと嘱望されている若手をコーチするという話で、指導する側とされる側が少しずつ前向きに変わっていく様子がなかなか印象的な作品になっています。ランナーの心理描写が上手な堂場先生ですが、指導される前後で日向のレース中の視点ががらりと変わるところを堪能いただきたいと思います。メインの舞台は山城の故郷である瀬戸内の島となりますが、「ライオンのおやつ」でも「八月の銀の雪」の中の一短編でも同様の島でのレモン栽培が取り上げられており、密かな瀬戸内レモンブームを感じます。

最近すっかりご無沙汰してしまっておりましたが、次回は文学女子への紹介企画をやろうと思います!そして、週末に訪問予定のE美容室には金次郎が10位と予想したものの5位と健闘した「自転しながら公転する」を寄贈し、Eさんに10位につくか5位につくか迫ろうと思います(笑)。

投稿者: 金次郎

読書が趣味の50代会社員です。

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