金次郎、時々訪れる神宮外苑の再開発に興味を持つ

4月から復活したNHKのクローズアップ現代は桑子キャスターの落ち着いた司会ぶりが心地よく、ニュース7からの流れで時間の有る際は結構観ております。そこで先日特集されていたのが神宮外苑の再開発計画で、このブログでも以前紹介した朝井まかて先生の「落陽」で描かれた、明治天皇を想い、神宮の杜の造営に植樹の協力などを通じて真剣に取り組んだ当時の日本中の人々のパッションが思い起こされ、少し淋しい気分になりました。樹齢100年を超える約900本の樹木が伐採あるいは移植されるという本再開発計画に対して市民団体の反対運動も起こっているとのことで、なんとか上手く移植という形で当時の人々の志を後世に残せればいいなと勝手に思っております。ただ、伐採でCO2排出量が増えると主張している人がいるようですが、老齢の樹木は成長ペースが落ちることで光合成の量も少なくなっているため、我々同様呼吸をすることで寧ろCO2の排出量は差し引きプラスになっており、老婆心ながらあまりその論点を主張し過ぎない方が宜しいかと思います。

2036年に完成予定となるこの計画では、4列×300メートルのいちょう並木はほぼ残るようですが、秩父宮ラグビー場は現在の神宮第二球場の場所にドーム型施設として生まれ変わり、神宮球場は逆にラグビー場のところにホテル等が入るビルをバックネット裏に擁するデザインで移転するようです。一方、草野球の聖地となっている軟式野球場は屋内・屋外にコートを備えるお金持ちのための会員制テニスコートに変貌を遂げるようで、いちょう並木を含む広大な私有地の維持費用捻出に苦心している明治神宮としては経済原則に従ったやむを得ない判断と思いますし(コロナでお賽銭も減ってしまったでしょうし)、野球がますます自分でプレイするスポーツから観るスポーツに変わっているのだろうなとも感じます。この再開発では建て替えとなる伊藤忠商事本社ビルを含む3棟の高層ビル(うち2棟は200メートル弱!)の建設も計画に含まれており、完工時点で64歳となっている(怖い)金次郎ですが、一度は冷やかしに行ってみようと今から楽しみにしております。

さて外苑前といえば金次郎夫婦がお世話になっているEさんの美容室が有り、まさか美容室の入っているちょっと古めのあのビルも再開発されてしまうのではと心配になりましたが、どうやら神宮とは無関係にそういう話が有るようで、移転先がどこになるのか非常に気になるところです。Eさんの美容室といえばこのブログでもお馴染みの金次郎の読書の弟子である文学好き双子姉妹のABさんが直ぐに頭に浮かびますが、中3受験生に読書を薦めるのもどうかと思いこのところ暫く紹介企画もできておりませんでした。忘れられてしまうのも淋しいですし、勉強にも息抜きは必要だろうと勝手に判断いたしまして、遠慮気味にいつもよりちょっと少なめの5冊だけを以下に挙げてみました。勉強が忙しければ来年の春に読んでもらえればと思います。

【文学女子&受験生ABさんへのお薦め本5選】

「阪急電車」(有川浩著 幻冬舎):宝塚駅から西宮北口駅に向かう阪急電車に偶然乗り合わせた人々が織りなすドラマを電車の進行と共に少しずつ重ね合わせながら温かに清々しく描く前半と、西宮北口からの復路で後日譚を描き伏線をさっぱりと回収する後半の組み合わせが素晴らしい一冊。僅か14分間という短い路線区間の何の変哲も無い生活電車にこれだけの物語を詰め込んだ有川先生の筆力に脱帽です。人生で一度はこの電車に乗らなくてはという気分にさせられ気が早いですが定年退職後の旅行先が一つ増えました。あ、希望に満ち溢れた受験生には無関係過ぎるコメントですみません(笑)。

「哀しい予感」(吉本ばなな著 KADOKAWA):吉本先生初の長編小説である本作ですが、会社の同僚から折に触れて繰り返し読み返すお気に入りの本と紹介されて読んでみました。金次郎はまだ一度読んだきりですが、主人公弥生の穏やかで幸福な世界に漂うそこはかとない破綻の予感が自由人の叔母ゆきのの存在を触媒に現実となっていく様子が、思春期を経て大人に向かう不可逆的な変化とシンクロしながら描かれている味わい深い作品との印象です。少し古い本ですが、今時の若者がこれを読んでどう感じるのか興味が有り選出いたしました。

「コンビニ兄弟 テンダネス門司港こがね村店」(町田そのこ著 新潮社):クレイジーサヤカこと村田沙耶香先生の「コンビニ人間」とタイトルは似ているものの、内容は全く違って無自覚にフェロモンを振りまくちょっと不思議くんなコンビニ店長となんでも屋のその兄という超絶人間力兄弟が、人生をこじらせかけた人々を力まず自然体で救い出すほのぼの物語となっています。金次郎の故郷である福岡が舞台で九州人の人情が溢れているので、受験勉強で煮詰まったら気分転換にぜひどうぞ。

「N」(道尾秀介著 集英社):なんと収録されている6作の連作(?)短編をどこからどういう順番で読んでもOKという非常に斬新な構成になっている作品です。算数的には6の階乗(6!=1×2×3×4×5×6)で720通りの読み方ができることになりますが、情けないことに金次郎は時間が無くて頭から愚直に読み終える以外のパターンを全く試せていないのでぜひやってみて感想を聞かせていただきたいところです。と思いましたが、受験生にはNGなお願いでしたね、すみません(苦笑)。

「珈琲店タレーランの事件簿 また会えたなら、あなたの淹れた珈琲を」(岡崎琢磨著 宝島社):「それは悪魔のように黒く、地獄のように熱く、天使のように純で、まるで恋のように甘い」とコーヒーを称したフランス貴族シャルル=モーリス・ド・タレーラン=ペリゴールの引用から始まるこの物語は、京都を舞台に聡明なバリスタ切間美星(きりまみほし)が持ち込まれる日常の謎をコーヒー豆を挽きながら解決していくライトミステリーとなっています。軽くどんどん読めてしまう上にシリーズ化されていて巻数も多くのめり込みが心配されるので、これまた受験生には不向きだったかも。でも、コーヒーで眠気を覚ましながら勉強というのも乙ではあります。

(最近のバックナンバーはこちら)

⑤いつの間にか読書の秋が始まり、慌てて文学女子に本を紹介

⑥文学女子とその母上に冬休みにじっくり読める本を紹介

⑦金次郎、文学女子に緊急事態GWを楽しく過ごすための本を紹介

⑧「灯火親しむべし」の読書の秋に文学女子に本を紹介

普通に本の紹介も少しだけ。「夏の体温」(瀬尾まいこ著 双葉社)は3作が収められた短編集です。表題作「夏の体温」は長期入院という小学生には耐えがたいと思われるストレスフルな状態を、本当に短い数日という期間を得難い友人と過ごすことで乗り越えていく、一瞬で打ち解け合える子供らしさとそのあっという間の成長力が眩しく感じられる爽やかな作品です。そして、金次郎はとにかく「魅惑の極悪人ファイル」でブラスト(ブラックストマック=腹黒)と陰口を叩かれている男子学生倉橋の淡々としたキャラが大変気に入りました。殆ど悪人が出てこない瀬尾作品の中で倉橋がどう描かれるのか、楽しみながら読んでいただける作品だと思います。

今のところ妻の張り込みが功を奏しハト害はなんとか回避できております。会社で同僚に話したところ、うちも実は狙われていた、うちのすぐ傍のアパートの入り口がハト糞だらけ、とハトとのニアミス経験者が結構多く、なかなかに猛威を振るっているようで恐ろしいです。

 


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投稿者: 金次郎

読書が趣味の50代会社員です。

「金次郎、時々訪れる神宮外苑の再開発に興味を持つ」への2件のフィードバック

  1. 金次郎さん、ご無沙汰しております。
    さっそく本題ですが、ABちゃんを侮ってはいけません、日々読書に邁進中です。今週中間テスト…2期制なので今が中間…でしたが、当日朝の玄関で「本忘れた」「読む暇ないじゃん」「昼休みある」いや、勉強してくれよ。
    金次郎さんのブログを拝見しては、興味のありそうな本をピックアップ。先日は「コミュ障探偵」を読みました。ABちゃんは似鳥鶏さんの『後書集』が出てくれないだろうかと期待しています。普通にエッセイ?

    ABちゃんはブログを読みながら「コンビニ店長は本屋さんで積まれてるよね」「Nもあったー」Bちゃんは「珈琲店タレーランがいいなあ」あら、それは師匠が心配しているのでは。
    「阪急電車」は読了しております。私が以前、その辺りに住んでおりまして。当時、会社の最寄り駅が小林で、会社から阪神競馬場が徒歩圏内でした。会社に車を停めて仲間とお馬さんのかけっこを見に行ったことを思い出します。

    1. 恵子さん、お返事が遅くなりすみません。受験生に気を遣っていたのは杞憂だったようですが、それこそが憂慮すべき問題なのか微妙ですね(笑)。
      とりあえずは、継続されている読書の一助になれたようで嬉しいです。「阪急電車」いいですよね。そして、私は今でも学生時代に始めた競馬に興じており、今週末のそれこそ宝塚記念にワクワクが止まりません。
      これから受験勉強が本格化して大変になると思いますが、ABさんの志望校合格を祈念しております!邪魔にならない程度にまた本の紹介もしますね。

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